努力する子の育て方

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「特異な才能児への支援」有識者会議、議論の流れとメディア報道のズレ

 

 

 

学校での「特異な才能のある児童」に対する支援、これまで認識されてこなかったその必要性と在り方を議論する文部科学省の有識者会議が始まったのは、昨年2021年の初夏のことでした。

同じ様に有識者会議を設置して進めた大学入試改革・・・そこでとんでもない大失敗をやらかした文科省だけに、果たしてどんな議論になるのか心配だったところもあったのだけど・・・


これまで見ている限り、この有識者会議では支援の必要性があるにも関わらず見過ごされてきた多様な子供達の存在をしっかりと見据えつつ、慎重ながらも変化への勇気と意気込みを十分に感じさせる議論が進んできていて、日本の公教育を変えていく大きな一歩になりそうだという期待も膨らんできていました。

 


さて、数日前にまたニュースヘッドラインに流れてきていたこの有識者会議の話題。

 

 

 

ここ最近仕事が忙しくて最新の議論の内容をフォローできていなかったので、また何か進展があったのかなと楽しみに読みに行くと、どうやら文科省が「特異な才能のある児童」支援のための予算要求を検討し始めたという話。

来年度予算の要求となれば話は一気に具体性を増すわけで、これは本当に楽しみな流れです。

今までの議論とは違う内容を報じる記事に驚き

しかしこの時事ドットコムの記事、予算の話とは別の部分で読んで少々ビックリしました。それは、その支援内容の説明の部分。記事を読むと、

教室外で高度な教育を受けられるようにして、通常の授業では易し過ぎて苦痛を感じたり孤立したりする子の才能を伸ばす。

とあって

そこで今回始める支援では、学校生活を送る上での困難を解決することを重視する。

ときて

支援の内容は、特定の教科だけ別室で高度なオンライン教育を行ったり、大学やNPOなどで指導を受けられるようにしたりすることが想定される。教室外での学習を出席日数や成績にどう反映させるか、連携できる機関を地方都市でどう確保するかといった課題への対応策を今後詰める。

・・・これだとまるで、「優れた能力があるのに学校で不適応が出ている子を学校外に取り出して伸ばす仕組みを作る」という方針に決まったみたいに読めてしまいます。

「学校生活を送る上での困難を解決することを重視している」と言っておきながら、その解決策を学校外に求める姿勢を基本とするのだとしたらおかしな話で、記事としても話がちぐはぐです。

しかし、この有識者会議に「問題解決のためには学校そのものも変える必要がある」という認識があるのは過去の議論から明らかで、その「学校を変える」という方策を含めて支援の内容を検討してきているというのが本当に素晴らしい部分だったはず。

それなのに、今回の記事の内容は、今までの有識者会議で進んできた議論の流れと全然違ってしまっているみたいに見えます。

短い間にここまで議論が急激に単純化され、おかしな方向に捻じ曲がってしまうなんてある・・・?とは感じつつ、大失敗した大学受験改革の時には、「結論ありき」で有識者会議の中の慎重論を黙殺するような展開になったという文部科学省の過去の話を思い出すと大変心配になり、急いで最近の有識者会議の議事録をチェックしに行きました。

 

 

 

以前の内容からブレない有識者会議の議論

公開されている最新の議事録は今年4月にあった第9回会議のものだったので、それを読んでみると・・・そこには「年齢不相応の能力や深い興味関心も含めて、色々な理由で学校で困っている多様な子供達」へどうやって支援の枠組みを作っていくかという、以前の会議から全く視点のブレない議論の記録がありました。

今回の報道のソースとなった第10回会議の議事録はまだ公開されていませんでしたが、この第9回の議事録に加えて第10回会議の配布資料を見る限り、今回の時事ドットコムの記事に紹介されているような学校外のリソース頼みの短絡的な“解決策”へと議論が帰着してしまったとは考えにくいものがあります。

特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第9回)議事録:文部科学省

 

特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第10回) 配付資料:文部科学省


実際に有識者会議を傍聴した人は何か言っていないかな・・・と思って探したところ、以前からギフテッド支援やこの有識者会議に関する情報提供を積極的にされている、才能はみだしっ子(@HamidashiKids)さんと学びの個性尊重プロジェクト(@manabinokosei)さんのこんなtweetを見つけました。

 


会議を傍聴された方々のお話を見る限り、どうやら今回の報道内容は有識者会議の内容をしっかり反映したものにはなっていなさそうで、モヤっとしつつとても安心しました。

記事のまとめ方と有識者会議の議論の本質のずれ

最近の有識者会議の議事録と時事通信の記事を改めて読み比べると、今回の時事ドットコムの記事というのは、有識者会議で議論されてきた内容の中から具体例として挙がったイメージしやすいキーワードだけを摘まんでつなげて作った説明になってしまっているなと感じました。

例えば「教室外での高度な学習」「高度なオンライン授業」「大学やNPOの協力」そういったリソース提供の話題は確かに会議の話題で出てきてはいる、いるけれど・・・それらはあくまで「使える可能性があって、学校以外に頼れる可能性が高いリソース」として出てきただけの話。

その議論の前提には学校内外の連携のもと各児童に個別化された支援を提供していく必要があるという会議全体の共通認識があり、学校外でのリソース提供を主軸に据えて問題解決を図るみたいな話は、どこにも出ていなかったはずです。

そもそもからして、この有識者会議の議論がこれまで集中してきているのは、「優れた能力や深い興味関心等、これまで認識されてこなかった様々な理由で学校で困っている多様な子供達」へどうやって支援を届けるかという部分。そして「特異な才能のある児童への支援は個別に考えなければならず具体化が難しい」という問題です。

具体化が難しい内容の枠組みをどう作ってスタートするか?という課題が議論の核心であるにも関わらず、その議論の中で出てきた具体的なキーワードだけをかい摘まんで記事にしてしまったら、それは本質を完全に無視した内容になってしまいますよね。

この記事によって、今文科省と有識者会議が挑んでいる「特異な才能を持つ子供達への支援」の話が、「一部の優秀な子供だけを対象にする」「学校ではなく外に居場所を作る試み」といったような歪んだ伝わり方をしないといいなあと思います。

そして何より、文科省と有識者会議がこれから予算請求に向けて打ち出していく具体策が、このメディア記事のまとめ方みたいな本質を外した、矮小化されたものに帰着したりしませんようにと願いつつ、また楽しみに見守っていきたいと思います。

<2022年8月10日追記>

有識者会議の議論はその後もブレずに進行し、第12回の会議の後はいよいよ議論のまとめにむけた「審議まとめ(素案)」の公開とパブリックコメントの募集も始まりました。


1年前にこの有識者会議がスタートした時は、確かに「ギフテッドに対する教育支援の必要性」という課題が議論の中心にあったかもしれません。

しかしこの有識者会議は、全ての生徒の多様性に配慮した学校教育の仕組みを作り、日本の義務教育が伝統的な「横並び教育」から脱却していくことで、「ギフテッドに対する教育支援の必要性」という課題についても包括的に解決するというメタな方向性を議論し、その具体化にむけて着実に進んできているのです。

その辺は議事録や「審議まとめ(素案)」を見れば明らかなのだけど・・・なんとも嘆かわしいのは、その後出てくる報道も、この記事で扱った時事ドットコムのものと同じように有識者会議で進んできた議論の本質を外し、「文科省がギフテッドという特別な才能に対して支援の仕組みを提供する」という誤った認識に基づくものが目立っています。

www.asahi.com

www.asahi.com



何度でも繰り返すけれど、この有識者会議の提言を受けて文科省が目指していくのは、一部の生徒だけではなく全ての子供達の多様性に対応するための、新しい教育の仕組み作り。

この点への理解はこの有識者会議の提言が今後文科省の事業として進んでいく上でキモとなるだけに、正しい認識が広まるように文科省側からのもう少し丁寧な説明が必要なのではないかもしれないですね。