努力する子の育て方

努力に勝る才能無し!努力の才能を育てる教育法、ボルダリングによる育児ハック実践、我が家の超個性的なギフテッド児の生態など

『鬼滅の刃』をいじめ・パワハラ・毒親への対抗指南書として読み解く(1)

f:id:KeiPapa:20201216233121j:plain

 

 

*****************
!ネタバレ注意!
この記事には漫画『鬼滅の刃』、映画『鬼滅の刃 無限列車編』、その他スピンオフ作品の内容や結末に関する記述が多数含まれています。未読・未視聴の方は作品を楽しまれてから本記事を読まれることをお勧めいたします。

*****************

 
いじめ、パワハラ、モラハラ、毒親問題・・・個人で、そして時として集団で行われるこうした陰湿な加害行為、虐待行為の存在は、近年ずいぶんと社会的認知が進んできています。こうした問題は無くしていかなくてはならない、そう考える人は確実に増えていっている一方で、その解決へ向けた社会的方策の整備は、残念ながらまったくもって不十分です。

うちの長男ケイも、小学校入学早々に集団いじめの被害者となりました。このケイのいじめ問題解決までの経過を記事にしたのはもう2年近く前のことですが、この記事へのアクセスはブログ全体の中で常に上位に来ていて、子供のいじめ問題に悩んでいる方、関心がある方の多さというのを感じます。

 
しかし最近、こうしたいじめやパワハラ、モラハラ、毒親問題への対策を個人レベルと社会レベル両方で考えていく上で、極めて有用だと思える本に出会いました。それがご存知、『鬼滅の刃』。

『鬼滅の刃』は社会現象と呼べる大ブームを巻き起こしており、その大人も子供も惹きつけるエンターテイメント性、魅力あふれるキャラクター達、前向きなメッセージ性の素晴らしさはもはや解説不要の代物です。

我が家でも、コロナ自粛の期間に見たアニメを入り口に、単行本を一気に買いそろえ、無限列車編の映画は公開日に観に行くなど、一家そろって大ハマり。

しかしこの『鬼滅の刃』、読めば読むほど、いじめやモラハラ等精神的虐待行為への対抗策を念頭に置いたと考えられる描写やメッセージが作中に散りばめられています。

そしてその描写やメッセージは、作者がそれを意図せず描いたと言われたら信じられないくらい、入念で、実践的で、本当によく考えられている。

そこでこの記事では、『鬼滅の刃』を読み解きながら、『鬼滅の刃』をいじめ問題、パワハラ等の精神的虐待行為への対策指南書として実践的に活用していく方法を論じていきたいと思います。

なお、これ以降本記事では、『鬼滅の刃』を非常に現実的な視点から読み解いていくことになりますので、読むと『鬼滅の刃』のファンタジーとしての世界観が損なわれる可能性があります。『鬼滅の刃』のファンタジーとしての世界観を大切にしたい方は、ご注意ください。

『鬼滅の刃』に描かれる現実世界の問題

『鬼滅の刃』を読みながら「この鬼みたいな人、実際にいるよね」と感じた人は結構多いのではないでしょうか?それはこの鬼滅世界の鬼たちの言動に、現実世界にいるある種の問題を抱えた人たちの特徴が描写されているからです。

その問題とは、自己愛の病理と、良心の欠如。この後詳しく見ていく通り、鬼滅世界の鬼たちの描写は、病的な自己愛の問題を抱えた結果、他人を傷つけ、嘘をつき、思うがままに操作しようとする自己愛性人格障害や境界性人格障害の人たち、そして、罪悪感を感じないが故に、平気で他人を傷つけ、嘘をつき、搾取できるサイコパス・反社会性人格障害の人たちを中心に、パーソナリティ障害の特徴を驚くほどよく捉えています。

そして、現実世界でいじめを行う加害者たち、パワハラ、モラハラ、毒親のような精神的虐待行為を行う加害者たちは、自己愛性人格障害、境界性人格障害、反社会性人格障害、サイコパスなどの特徴を備えているケースが非常に多いことがこれまで繰り返し指摘されています。

https://core.ac.uk/download/pdf/327117165.pdf

セクハラ・パワハラの心理を徹底分析〜サイコパスの「真実」を明かす(原田 隆之) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

「マイルド・サイコパス」とは | 岐阜県多治見市の心療内科・精神科 水谷心療内科|ネット予約可能

独断書評<知らずに他人を傷つける人たち>

自己愛の強い母親が、ムスメを不幸にする!その「束縛」から逃れる方法(キャリル・マクブライド) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)

 
つまり鬼滅世界の鬼たちとして描かれているのは、病的な自己愛と認知の歪みに基づいて、他人を物理的・精神的に傷つけてしか生きられなくなった人たち、また、他人を騙して自己利益のために都合よく操ったり、経済的に搾取したりする、まさに「他人を食い物にして生きる」ことを始めた人たち。

これまでのところ、作者である吾峠呼世晴(ごとうげ こよはる)先生が鬼を「そういう人間の暗喩である」と発言されたことはありません。しかし、それが意図的であるかどうかに関わらず、『鬼滅の刃』の鬼達の描写は、現実世界にいるそうした問題を抱えた人々のメタファーとして、あまりにリアルです。

 

 

『鬼滅の刃』の鬼達に見るパーソナリティー障害の特徴

よく「鬼側の悲しいストーリーも描いている点が素晴らしい」と評される『鬼滅の刃』。確かに、鬼が人間であった頃のストーリーにより、敵役である鬼のキャラクターが掘り下げられ、物語に一層の深みが出ています。

しかし、犯罪心理学に興味があったり、人格障害について調べたことのある人、そして運悪くそういう人達の被害に遭ってしまった人ならば読んですぐにピンとくることと思いますが、鬼たちの「悲しいストーリー」は実際のところ、鬼達が人間だった時から抱える認知の歪みや自己愛病理、パーソナリティー上の問題の解説になっています。

まずここでは『鬼滅の刃』の中の鬼に投影されている、自己愛性人格障害・境界性人格障害・サイコパスの特徴を見ていくことにしましょう。

自己愛性人格障害・境界性人格障害の自己愛病理が投影された鬼たち

『鬼滅の刃』に登場する鬼達の中で多いのは、自己愛の病理と認知の歪みを抱えた結果、自己愛性人格障害・境界性人格障害様の行動をとるようになった者たちです。

自己愛性人格障害の人というのは、簡単に言えば、脆弱な自尊心を持ちコンプレックスを抱え、自分を守るため、自分が傷つかないようにする目的で、他人を傷つけたり、他人を操作するために嘘をついたりと、おかしなことをするようになる人たちです。

自己愛性パーソナリティ障害(NPD) - 10. 心の健康問題 - MSDマニュアル家庭版

自己愛性パーソナリティ障害とは?特徴やタイプ、境界性パーソナリティ障害との違いって?【LITALICO発達ナビ】


そして境界性人格障害の人というのは、簡単に言えば、他人の愛情を上手く感じられず、愛情に欠乏する結果、他人からの自分の求める愛情を得ようとする目的で、他人を貶めたり、攻撃し始めたり、支配しようとしてしまう人たちのことです。

境界性パーソナリティ障害(BPD) - 10. 心の健康問題 - MSDマニュアル家庭版

鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)

まずは何と言っても、鬼の頭目、鬼舞辻無惨(きぶつじむざん)。彼は自分を特別視し、極めて利己的で、傲慢で、失敗や敗北を極度に恐れ、臆病で、衝動的で、他罰的で、非合理的で・・・と、自己愛性人格障害の人の特徴、特に「尊大型」と呼ばれるタイプの特徴が徹底的に描写されたキャラクターとなっています。

無惨は生まれる前から死にかけていて体が虚弱であり、長くは生きられないとされていました。善良な医者によって様々な治療を受けるものの、効果を感じられなかった無惨は怒りを募らせ、医者を殺してしまいます(他罰性、衝動性)。しかし、その後薬の効果が現れ始め、無惨は鬼として、滅びぬ肉体と怪物としての能力を手に入れます。

自己愛性人格障害のメタファーとしての無惨は、本当にリアルです。まず、無惨の行動原理は全て「自分が生きる」という目的にしか向かっていません。鬼を増やし、強い鬼を作っても、その目的は「太陽という生活上の制約を取り除くため」と「自らの脅威となる鬼狩りを滅ぼすため」でしかない。自分以外の事に関する思慮や目的意識を、無惨は一片も持っていないのです。

こうした極端な自己中心性、利己性は、自分の尊大な自己像を守ることしか考えていない、自己愛性人格障害の人々の大きな特徴です。

そして無惨は、その自分が生きるという目的のために、他の人間を利用します。無惨の血を入れられた人間は、無惨の呪いによって、無惨に支配される鬼になってしまう。無惨の意に反すれば簡単に殺されてしまうし、無惨の命令に従って、無惨の自己中心的な目的のために行動することしか許されなくなってしまいます。

自己愛性人格障害の人達もまた、自分の利己的な目的、自分の抱える尊大な自己像を守るという目的のために、嘘をついたり、相手の恐怖、罪悪感、自己愛の問題に付けこむといった様々な心理的テクニックを駆使して、他人を操作しようとします。

無惨は下弦の鬼を集めた通称「パワハラ会議」の際に、どう答えても相手の回答を否定する、「ダブルバインド」と呼ばれる精神的虐待行為を披露していますが、実際の自己愛性人格障害の人達もまた、こうしたテクニックを駆使してこちらを操作しようとしてきます。そして、その巧妙さは、無惨以上の場合もあるという恐怖。

無惨は尊大で自信ありげに振る舞いますが、コンプレックスを抱えていて、実際は自分に自信がありません。かつて行動を共にしていた珠代に「あの男はただの臆病者。いつも何かに怯えている」と直接評される描写もありますが、その特徴は無惨の行動としても何度も繰り返し描写されています。

例えば、通行人に「青白い顔してら」「今にも死にそうじゃねか」と絡まれた際に「私の顔は青白いか」「今にも死にそうに見えるか」と激昂し、「私は限りなく完璧に近い生物だ」と言いながら相手を殺す余裕のなさ。

敗北しそうになった相手、最強の剣士縁壱(よりいち)に怯え、憎み、徹底的に避ける様子。本当に「限りなく完璧に近い生物」だと思っているならば、ただの人間である縁壱を恐れる必要はないはずなのに。

そして自分が最強であるにも関わらず、配下の鬼同士が群れて裏切らないように呪いをかける、最強であるはずなのに自分は鬼狩りと直接戦わず、配下の鬼に鬼狩り討伐を命じ続ける等々、尊大で自信がある態度とは裏腹に、実際の行動は非常に臆病で、余裕が感じられず、非合理的です。

こうした実際の自信のなさを表面的に取り繕うような態度も、自己愛性人格障害の特徴をよく反映しています。自己愛性人格障害の人は尊大な自己像を抱え、その自己像が傷つくことを何よりも恐れています。尊大な自己像を傷つける存在は攻撃して遠ざけますが、失敗しそうな局面からは言い訳しながら逃げ回ります。従って、勝てるかわからない相手に対しては、情報を操作しながら他人を操って攻撃させる戦略をとることもあるのです。

そして、ストーリーの終盤、鬼殺隊に追い詰められた無惨の、ネットニュースにもなった超有名なセリフ。家族を殺され、同じ目に合う人がもうこれ以上出ないように、人を食う鬼がいない世界を目指して無惨を追い詰めた炭治郎と冨岡義勇に対して発せられた、以下のセリフ。

しつこい お前たちは本当にしつこい 飽き飽きする 心底うんざりした
口を開けば親の仇 子の仇 兄妹の仇と馬鹿の一つ覚え
お前たちは生き残ったのだからそれで十分だろう
身内が殺されたからなんだと言うのか
自分は幸運だったと思い元の生活を続ければ済むこと
私に殺されることは大災に遭ったのと同じだと思え
何も難しく考える必要はない 雨が風が山の噴火が大地の揺れが どれだけ人を殺そうとも天変地異に復讐しようという者はいない
死んだ人間が生き返ることはないのだ いつまでもそんなことに拘っていないで 日銭を稼いで静かに暮らせば良いだろう
殆どの人間がそうしている 何故お前たちはそうしない?
理由は一つ 鬼狩りは異常者の集まりだからだ
異常者の相手は疲れた いい加減終わりにしたいのは私の方だ
     (出典:『鬼滅の刃』21巻 181話)

何度読んでも、すごい自己正当化理論。さすがにここまでの大見えを切り滅茶苦茶なことを言う人は、現実世界ではちょっとお目にかかれないかもしれない。

しかし・・・自分の嘘や加害行為が白日の下にされされた時、被害者の側にたって問題を追及し、問題解決を試みる相手をレッテル張りし、非難し、責任転嫁し、自らを被害者として正当化しながら相手を無力化しようとする行為は、自己愛性人格障害の人の振舞いとして、ありふれているのです。

「本当にそんな人現実にいるの?」と思う人もいるかもしれない。そういう人は、たぶんこれまで病的な自己愛を抱えた人に出会ってこなかった、幸運な人。しかし、大変残念なことですが、血鬼術を使ったり触手を振り回したりしないけど、言動は本質的に無惨そのものみたいな人は、本当にいるのです。

(2)に続きます。