努力する子の育て方

努力に勝る才能無し!努力の才能を育てる教育法、ボルダリングによる育児ハック実践、我が家の超個性的なギフテッド児の生態など

努力する子を育てるために自分の自己肯定感を高めていく・前編

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努力する子に育てるために、子供に自信を与えていくことは不可欠です。自分の能力やポテンシャル、自分のやり方や考え方、そういうものを自ら疑っていては、自発的に行動していくことは不可能だからです。さらに、自分への自信は、失敗しても諦めず前向きに行動していく上で重要な原動力です。自信のなさは消極性を生み出し、子供のチャレンジや自発性を妨げてしまいます。

子供に対する親の褒め方や接し方の工夫で、子供の自信をより効果的に育む方法は、これまでにも少し説明してきました。しかし、子供の自信を育んでいくためには、まず親がきちんと自分に自信を持てていることが必要です。

なぜかと言えば、自分に自信の無い人はどうしても他人の自信を奪ってしまうからです。なぜそんなことが起こるのでしょうか?子供に自信を与えていくべき親が、子供の自信を奪っていては意味がありません。今日は、自分に自信の無い親が子供の自信を奪うメカニズムについて、見ていくことにしましょう。

自己肯定感と自己効力感

「自分への自信」というものを詳しく見ていくと、その対象によっていくつか異なる自信に分類できます。一つは、自分の能力に対する自信である、自己効力感。これは「自分ならやればできる」という自信です。そして、自分の存在への自信である、自己肯定感。これは、「自分の存在には価値がある」という自信です。

自己効力感と自己肯定感、同じ自分への自信ですが、一つ非常に大きく違う性質があります。それは、自己効力感が根拠に基づいて育まれる自信であるのに対し、自己肯定感は、根拠に基づかない無根拠な自信であるという点です。

自己効力感は、成功体験によって育まれます。「自分で行動し成果をあげた」という経験を根拠として、自己効力感は育まれていきます。一方自己肯定感は、無根拠です。人間の存在価値に、そもそも根拠を見つけることは難しいのです。

今日の話で問題になるのは、この2つのうち自分の存在への自信である、自己肯定感の方になります。

自己肯定感の不足という大きな劣等感

自己肯定感の不足は生きていく上で大きなストレス、生きづらさを生みます。自己肯定感が高いというのは「自分が好き、認められる」ということとほぼ同義です。自分のことが認められない、好きでいられないという状況は、自己存在の根本に疑いを持った状態であり、大きな劣等感を抱えた状態と言えます。

自分自身に大きな劣等感を抱えた状態では、人間は悲観的になり、不安を抱えることになります。自分を信じることができず、あらゆる側面で消極的にならざるをえません。また、社会との関わり方にも大きな障害が生まれます。私達の他人への信頼というのは、自分への信頼とも言える自己肯定感に依存しているのです。従って、自己肯定感の不足は、他者への基本的な信頼感の欠如へとつながっていきます。そしてこうした問題が、社会生活や対人関係の問題として表面化し、生活の中でのさらなる不安とストレスを生み出します。

 

 

ストレスによって刺激される無意識の防衛機制

このように、自己肯定感の不足は、さらなるストレスと自己肯定感の低下を生み出す傾向にあります。しかし、人間の心には、大きな不安やストレスなどの心の問題を軽減しようとする、無意識的な心理メカニズムが備わっています。それが防衛機制です。

防衛機制には様々な種類があります。例えば、「否認」はストレスや不安を生じる原因の存在そのものを否定します。「逃避」はストレスや不安を生じる場面を避けるものです。「同一化」は自分以外ものの価値や名声を自分のもののように捉えることです(例:親の職業自慢)。「合理化」は自分の失敗をもっともらしく正当化する行為です。「代償」は、いわゆる八つ当たりのことを指します。

他にも様々な防衛機制の形が知られていますが、こうした心理メカニズムは誰にでも存在し、無意識のうちに働きます。しかし、防衛機制のほとんどは、ストレスを生む問題の所在や責任を自分以外に転換するか、問題から目をそむけることで成立しています。

従って防衛機制は問題解決の方法としては非合理的で不適切であり、ストレスや不安は一時的に軽減されますが、根本的な問題解決にはつながりません。また、他人から見れば全く非合理的かつ自分勝手で無責任なものであり、頻繁に表れると社会生活や人間関係で信頼失墜などのさらなる問題の引き金になります。

低い自己肯定感が阻む自己受容

自己肯定感が低い人の問題点として、自分の現状をありのまま認める、「自己受容」ができないということがあります。自己受容は、自分に関する問題を前向きに解決していく上で必須のプロセスですが、失敗などの自分に関するネガティブな側面も含めて受け入れる必要があるため、心理的ストレスが生じます。

自己肯定感が低い場合、必要以上に悲観的な認知傾向にあるため、この自分に関するネガティブな側面の受け入れに、過大なストレスが発生してしまいます。また、自己肯定感の低さからくる劣等感を既に抱えている状況では、自己受容によるストレスが元々のストレスに加わることで防衛機制が働き、ありのままの自分や問題の本質を理解できない可能性が高くなります。

こうした理由から、自己肯定感の低い人にとっては、自分の現状をありのまま認めるという行為が、この上なく苦痛で困難なものになってしまうのです。

自己肯定感の低い親が子供の自信を奪うメカニズム

少し前置きが長くなってしまいましたが、ここから今日のメイントピックである、自信の無い(=自己肯定感が低い)親が子供の自信を奪うメカニズムを見ていきましょう。

自己受容できない親が子供の自信を奪う

自信の無い親が子供の自信を奪う大きな要因の一つは、親の自己受容の困難さにあります。親子や家庭、そして子供のネガティブな問題に直面した時に、親が自己受容できないとどうなるでしょうか?こうした問題では、親は責任者として間違いなく問題の中心にあるはずです。その親がきちんと自分の現状を認められなければ、まずは当然、問題の解決が難しくなります。

どんなことであれ、親子や家庭、子供のネガティブな状況を解決せずに引きずることは、子供の情緒的発達、特に自己肯定感に多大な悪影響を及ぼします。子供の情緒的発達の基盤は、親からの温かい養育を基礎とする安心感です。この安心感が得られない状況では、子供の健全な自己肯定感は育まれません。

また、防衛機制のタイプの中には、自分から他人へ責任転嫁をする行為も含まれています。防衛機制によって自分の責任を子供に転嫁してしまえば、親の分まで責任を転嫁された子供は失敗を押し付けられた形になり、当然自信を失ってしまいます。

そして何より、親が子供である自分よりも親自身を優先しているという状況が、親子の信頼関係に決定的な悪影響を及ぼします。親子の信頼関係が親から子への無条件の愛情を前提としており、条件付きの愛情の提示が子供の自己肯定感に悪影響を与えるということを以前の記事で紹介しました。

自分が受容できる状況かどうかによって、子供を守ったり、守らず責任転嫁をしたりするという状況は、まさにこの条件付きの愛情提示です。条件付きの愛情提示が繰り返されれば、子供は親の愛情を疑い、自己肯定感の低下が全般的な自信喪失を引き起こします。

親のコンプレックスの代償として奪われる子供の自信

自己肯定感の問題には、しばしばコンプレックスの問題が付随しています。学生生活、学業、運動、学歴、恋愛、職業、年収・・・親の低い自己肯定感の裏に自分のこれまでの人生で生まれたコンプレックスが存在する場合、それが防衛機制を通じて、子供の自信を奪う要因となります。

上の方でも少し紹介しましたが「同一化」という防衛機制があります。これは、他者と自分を近づけることで、他者の名誉やステータスを自分のもののように思いこむという行為です。親子は元々関係性が近いため、この同一化の防衛機制が働きやすい特徴があります。

親が何かのコンプレックスを有している場合、子供との同一化を通じて、自分のコンプレックスの解消を図ることがあります。例えば学歴にコンプレックスを抱える親が、子供に勉強をさせて有名大学に進学させようとするなど、親が自分で成し遂げられなかったことを、子供に成し遂げさせようとする行為がわかりやすい例です。表向きは「子供の将来のため」としていても、その根底には自分の拭いきれない劣等感の存在があります。

こうした場合、親は子供に対し、極端に結果を求めます。子供の失敗は親のコンプレックスをさらに刺激するため、親はそのストレスを避けるためにも、非常に厳しく結果を求めます。以前にも書きましたが、結果ばかり求めると、結果が出ればいい子、出なければ悪い子という風に、条件付きの愛情の提示になってしまいがちです。そして親のコンプレックスが絡むと、その傾向はさらに強まっていきます。

子供が親のコンプレックスに気づいてしまえば、当然子供は自分よりも親のコンプレックス解消が優先されているという状況に失望し、親子の信頼は失われます。さらに、親の目論見が上手くいかなかった時、例えば子供が目的を果たせなかったり、親の意向に従わなかった場合に、決定的に悲劇的な状況が生じる可能性があります。それは、親による子供の存在価値の否定です。これは子供の自信を決定的に破壊します。

自己肯定感を高めていくために

以上、自己肯定感の低い親が、子供の自信を奪ってしまうメカニズムを説明しました。自己肯定感は自尊心、自尊感情などとも呼ばれ、「なんでも自分を肯定する態度」「自分の価値を何よりも高く評価する」といった自己中心的なものと誤解されることがあります。

しかし、自己肯定感、自尊心、自尊感情の本質は、自己受容です。「良い点悪い点含めて自分はこれでOK」「ありのままの自分に価値がある」と思えることが、十分に自己肯定感を有するということであり、逆に「何がなんでも自分を肯定する」、「自分の間違いを認めない」といった態度は、ほとんどの場合低い自己肯定感からくる、防衛機制によるものです。

では、自己肯定感が低い場合、何か手立てはないのでしょうか?実は自己肯定感は、大人になっても十分に高められます。そこで後編の記事では、親の自己肯定感を高める物の考え方について、書いていきたいと思います。

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