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【注意喚起】事業許可無しに「高IQ人材を企業に紹介」とのたまう自称高IQ者支援団体にご用心

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一般財団法人 高IQ者認定支援機構(HIQA)・・・皆様は覚えていますでしょうか?2年ほど前の一時期、当ブログのトップページを関連記事が埋め尽くしていたことがあった、高IQ人材への支援を目的に設立されたと自称する団体です。

この団体が高IQ者認定に使うと言っている「高域知能検査CAMS」が間違っても知能検査とは呼べぬ似非科学的な代物であること、「知能検査に偏差型IQを採用している」という宣伝文句が嘘であること、そして高IQ者への支援のためと言いながら有料テストの実施にばかり拘る矛盾した姿勢などから読み取れる、この団体の不誠実さや胡散臭さは、以前記事にまとめた通りです。


 
2年前に記事を書いたのは、IQリテラシーがただでさえ低いこの国で、こんな団体の活動がまかり間違って勢いを得たら嫌だな、一消費者として、同じ消費者の方々には是非事実を知り、納得した上で商品・サービスを購入して頂けるよう情報提供したいなという思いからでしたが・・・その後私自身が多忙になったことに加え、CAMSの受検者数は幸いにも低空飛行を続けているようでしたので、次第にこの団体の話は私の中の関心事リストから落ちていきました。

ところが今回、当ブログ読者の方々から、私の脳裏にこの団体の記憶を鮮烈に蘇らせる極めて興味深い情報が寄せられました。それはなんと、この一般財団法人 高IQ者認定支援機構が、人材紹介や人材派遣に必要な事業許可を全く取得しないまま活動を行っているという話。

えぇぇ?この団体は、そもそも「高IQ人材を企業に紹介する」ということで日経新聞に記事が載ったんですよ?


団体のウェブサイト上でも「高IQ者支援の方策」として「就職や転職を支援していきたい」「就職・転職の斡旋を開始したい」なんて書いてあるんですよ?


就職斡旋や人材紹介が免許制だというのは、そういった業界と全く無関係な私でも知っていた話だったのですが・・・それなのに、実際に事業にすると言っている人達が許可を取っていないなんて話、本当なのでしょうか?


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■謝辞■ 本記事は読者の方々から提供された情報をもとに、独自の取材と検証を行った上で作成したものです。大変興味深い情報および調査の手掛かりを提供して頂いた方々に、この場を借りて感謝申し上げます。

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高IQ者認定支援機構(HIQA)の事業許可の有無を確認する

人材紹介と人材派遣は、それぞれ厚生労働大臣の許認可が必要な事業です。企業への人材斡旋、個人への就業斡旋には「職業紹介事業許可」、人材派遣の場合は「労働者派遣事業許可」がそれぞれ必要になります。

情報提供者の方に詳細を聞くと、この職業紹介事業と労働者派遣事業の許可を受けた事業者は、厚生労働省の運営する「人材サービス総合サイト」から検索が可能とのこと。そこで早速自分の目で確かめるべく、検索を行ってみました。


読者の皆さんもご自身の目で確かめてみたらわかりますが・・・「一般財団法人 高IQ者認定支援機構」の名前は、出てきません。検索対象を日本全国に広げ、「一般財団法人」「IQ」「認定支援」「支援機構」と様々なパターンで事業者名の部分一致検索を試みても、職業紹介事業と労働者派遣事業の両方に関して、少なくとも2021年6月1日までに許可を取得した事業者の中に「一般財団法人 高IQ者認定支援機構」は出てきません。

人材サービス総合サイトの検索はアルファベットの全角・半角・大文字・小文字を区別することがわかったので、そこも注意して入念に検索しましたが・・・「一般財団法人 高IQ者認定支援機構」の名前がヒットすることは、ありませんでした。

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人材サービス総合サイトにて、全国の職業紹介事業の許可・届出事業者の中から事業者名に「認定支援」が含まれるものを検索した結果(検索日:2021年7月3日)

 

登録漏れの可能性を問い合わせる

しかし、もしかしたら、許可を取っていても「人材サービス総合サイト」に登録されないケースというのがあったりするのでは?

そこで、東京都における職業紹介事業と労働者派遣事業の許可申請窓口である東京労働局と、「人材サービス総合サイト」を運営している厚生労働省の双方に問い合わせを行いました。

すると、両者の回答は全く同じ。「許可を受けた事業者であれば必ず登録されます」「検索して出てこない事業者は許可を受けていないと判断して問題ありません」とキッパリ。どこの行政窓口でもこれくらい濁さず質問に回答してくれたらいいのにと思うような、キッパリとしたご回答でした。

とすれば、「人材サービス総合サイト」の検索でヒットしない「一般財団法人 高IQ者認定支援機構」は、自分達が認定した"高IQ人材”に向けて企業への紹介や就職・転職斡旋を実施していくようなことを言いながら、その実、必要な事業許可すら得ていなかったということになります。

職業紹介業には「無料職業紹介事業」と「有料職業紹介事業」の2形態が存在しますが、一般財団法人等の民間事業者の場合、無料、有料の別によらず必ず許可が必要です。

また職業紹介業、労働者派遣事業どちらについても、無許可で営業を行った場合には職業安定法に定める罰則(懲役1年以下又は罰金100万円以下)があり、この罰則の重さは無料職業紹介事業でも変わりありません。

従って許可を得ずに"高IQ人材"を企業に紹介するのは違法行為に該当するわけですが、いったいこの団体はどういうつもりで、"高IQ人材"の就職、転職斡旋を行いたいと言っていたのでしょうね?

許可がないなら取ればいいじゃないか?という甘すぎる考え

次に気になったのは、事業許可取得の難易度でした。職業紹介や労働者派遣の事業許可が、取ろうと思えばすぐに取れるようなモノであれば、許可を持たずに「高IQ者を企業に紹介する」なんて言ってしまっても、すぐに取り返せる程度のミスで済むかもしれません。

そこで、情報提供者様と東京労働局の方に教えてもらった通りに、職業紹介や労働者派遣業の事業許可取得に関する要件を調べてみると・・・わかったことは、上記の私の考えの甘さ、そして高IQ者認定支援機構の語る高IQ者支援方策の、根拠の無さでした。

そもそも認められていない有料IQテスト受検者を企業に紹介する事業スキーム

早速、職業紹介事業許可の要件から確認してみましょう。有料職業紹介事業と無料職業紹介事業の許可要件は、共に↓コチラ(厚労省PDF)で確認できます。

https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/syoukai/dl/03.pdf


そして、有料職業紹介事業の許可要件から見ていくと・・・次のような項目が目に留まります。

(4) 適正な事業運営に関する要件

(中略)

 ハ 手数料に関する要件
(イ) 適法な手数料以外に職業紹介に関し、いかなる名目であっても金品を徴収しないこと。

 
なんと、現在の法律(職業安定法)では、職業紹介事業者が収益を上げるための方法は、「職業紹介に関わる手数料」以外に認められていないのです。そして、その手数料の内容に関しても職業安定法で厳しく規制がなされており、ごく限られたケースを除いて、求職者からの費用徴収は基本的に認められていません。

https://www.mhlw.go.jp/general/seido/anteikyoku/jukyu/syoukai/dl/06.pdf


従って、IQテスト受検料の徴収で収益を上げる事業スキームでは、職業紹介事業の許可は原則認められないことになります。

さらに、有料職業紹介事業の「適正な事業運営に関する要件」には、以下のような項目もあります。

(ロ) 有料職業紹介事業を会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として利用するものでないこと。


すなわち、高域知能検査CAMSで受検料を徴収し、職業の紹介や斡旋を受検者である"高IQ者"の受けられる特典かのように謳っている高IQ者認定支援機構の事業スキームでは、まずもって有料職業紹介事業の許可を得ることは難しいと思われます。

無料職業紹介事業として許可を取る可能性を考える

しかし、どんな法律にも抜け穴はつきものです。例えば、斡旋手数料以外の部分で収益を上げているけれど、職業紹介自体は無料で行っている場合、無料職業紹介事業としてなんとか許可を取ることはできないでしょうか?

ところが厚生労働省の説明を見ると、こうした方法は予め想定の上でしっかり潰されていることがわかります。例えば、「職業紹介事業の概要」における無料職業紹介に関する以下の説明文。

無料職業紹介事業とは、職業紹介に関し、営利を目的とするか否かにかかわらず、いかなる名義でも手数料又は報酬等の対価を受けないで行う職業紹介事業をいいます。 したがって、例えば、会費を徴収している会員事業主に対してのみ料金を徴収せずに職業紹介を行ったり、職業紹介事業の委託を受けた場合に、委託費等の額が職業紹介の実績により変動する方法により支払われていたりするものについては、実質的に職業紹介の対価を得ているものとして、有料職業紹介事業と判断されます。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000180131.pdf

 

このように「お金を払っている相手を間接的に多少優遇する」といった程度でも無料職業紹介事業とはみなされないということなので、他の有料事業との関係性が実質的に少しでもあるのであれば、無料職業紹介と認められることはないでしょう。

さらに、無料職業紹介事業の許可要件を調べると、以下の項目が見つかります。 

(4) 適正な事業運営に関する要件

(中略)
(ハ) 営利法人にあっては、無料職業紹介事業を本来の営利活動に資する目的で行おうとするものでないこと。
(中略)
(ホ) 無料職業紹介事業を会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として利用するものでないこと。


これは有料職業紹介事業の許可要件にもあった内容とそっくりで、とにかく職業紹介事業を利用して他の事業で利益を得る構図は一切認めないという、厚生労働省の強い意志を感じます。職業紹介を有料テストの受検者特典にしている場合には、どう頑張っても許可が下りることはなさそうですね。

 

 

人材派遣業の許可基準はさらに厳しい

高IQ認定支援機構の、有料IQテストで集めた受検者の就職や転職を斡旋するという計画は、職業紹介事業許可基準の除外要件に該当してしまっており、職業安定法上適法と判断される可能性は期待できなさそうだということがわかりました。それでは、労働者派遣事業の方はどうでしょうか?

・・・残念なことに、労働者派遣事業の許可基準は、職業紹介事業に比べてさらに厳しくなっています。また、許可要件の中には、以下の除外要件があります。

(ニ) 適正な事業運営に関する判断

労働者派遣事業を当該事業以外の会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として利用しないこと、登録に際しいかなる名義であっても手数料に相当するものを徴収しないこと等法の趣旨に沿った適切な事業運営を行うものであり、次のいずれにも該当すること。

(中略)

c 労働者派遣事業を当該事業以外の会員の獲得、組織の拡大、宣伝等他の目的の手段として利用するものではないこと。

(中略)

d 登録制度を採用している場合において、登録に際し、いかなる名義であっても手数料に相当するものを徴収するものではないこと。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000133882.pdf

 

有料テストを受検して"高IQ者"として登録されないとサービスがうけられないという場合、dの項目を満足できません。高IQ者認定支援機構の有料IQテストを中心とした事業形態は、労働者派遣事業の許可基準にも合致していないと言えるでしょう。

業務提携による人材紹介や人材派遣も事業許可がなければ違法

そういえば、高IQ者認定支援機構は「高IQ者支援の方策について」の中で、こんなことも言っていました。

意欲的な人材育成会社や人材紹介会社等とも提携して、その就職や転職を支援していきたいと考えております。

当財団による高IQ者支援の方策について


なるほど、許可を得ている会社と業務提携すれば、自らが許可を得ていなくとも職業紹介事業を行っていくことができるのでしょうか?

ところが調べてみると、職業紹介事業許可を得ている事業者が許可を得ていない事業者と業務提携して職業紹介事業を行うのは、職業安定法が禁止している「名義貸し」にあたる可能性が非常に高そうです。

(名義貸しの禁止)
第32条の10 有料職業紹介事業者は、自己の名義をもつて、他人に有料の職業紹介事業を行わせてはならない。

職業安定法|条文|法令リード


実際、厚生労働省の示す職業紹介事業の運営指針においても、「業務提携による職業紹介は職業紹介事業許可を得ている事業者同士でのみ認められる」という内容が明記されています。

 (2) 業務提携による職業紹介の主体

業務提携による職業紹介を実施しうる職業紹介事業者は、法の規定により許可を受けていること等により適法に職業紹介事業を行う職業紹介事業者に限られるものである。これは、業務提携においてはいずれの職業紹介事業者等も職業紹介の全部又は一部を行うものであることによる当然の要請である。

 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11650000-Shokugyouanteikyokuhakenyukiroudoutaisakubu/0000180409_8.pdf


名義貸しを行った事業者は懲役1年以下又は100万円以下の罰金という罰則の他、事業許可取り消しなど非常に厳しい行政措置を受ける可能性があるということなので、まともなコンプライアンス意識を持った事業者であれば、職業紹介事業許可を得ていない事業者と業務提携するようなリスクは犯さないことでしょう。

また、職業紹介事業許可を持っている誰かに職業紹介事業を委託するという方法も、同様に名義貸しに該当する可能性が高いことになります。自分が職業紹介事業の許可を取らずに職業紹介を行う道は、潰されていますね。

つまり、高IQ者認定支援機構が提示していた「業務提携による就職や転職の支援」は、この団体自身が事業許可を得ていない場合は、違法行為となり実現し得ないということになるでしょう。

自分が計画する事業が適法かどうか調べるリーガルチェックなんて、ビジネスを始める上では基本中の基本だと思うんですけど・・・もし本気でやっているとしたら、この人達の事業手腕には、相当な疑問符がつくのではないかと思います。

はっきりしない支援を謳う怪しい売り文句にご用心

見てきたように、一般財団法人 高IQ者認定支援機構は、新聞報道や自己のウェブサイト上で「高IQ人材を企業に紹介する」「就職、転職の斡旋を開始したい」などと自分達が"高IQ者"と認定した人に対する支援内容を謳いながら、それに必要な事業許可を得ていないことが判明しました。

また、職業紹介事業と労働者派遣事業の許可要件からは、CAMSで受検料を徴収しており、人材紹介事業を実質的にCAMSを受検した人に対するインセンティブとして提示している高IQ者認定支援機構が、事業の許可を得ることはそもそも非現実的であるということもわかりました。

高IQ者の支援として企業への人材紹介を本気で考えているのであれば、どうして"高IQ者"を適法に企業に紹介するための事業許可を得ていないのでしょうか?企業への人材紹介を考えていたにも関わらず、それには許認可が必要だということすら調べがついていないまま、これまで2年以上も活動してきたのでしょうか?(さらに準備期間が2年あったということも、忘れてはいけません)。

高IQ者への支援として高IQ者を企業に紹介する、就職・転職の斡旋を行っていきたい、本当にそう考えているのであれば、事業許可を得るのは何よりも優先事項になるはずです。それなのに、職業紹介事業許可の除外要件に該当する、有料IQテストによって収益を上げるスキームに拘るのはなぜなんでしょうか?

高IQ者の支援のためと言いながら、なぜか高IQ者支援の具体的な話はそっちのけで出来の悪いIQテスト風パズルの有料実施にばかり拘るこの団体の矛盾は、以前の記事でも再三指摘しましたが・・・今回判明した事実は、この高IQ者認定支援機構の正体を極めて端的に表していると言えるのではないかと思います。

もしもこの団体の支援を受けたいとCAMSの受検を考えている方は、このような経緯が示すこの団体のコンプライアンス意識をよく考えた上で、本当に自分が思っているような支援が受けられる具体的可能性があるかどうか、団体が信頼に足るものかどうかをよくよく吟味した上での意思決定を強くお勧めいたします。

もしも「話が違う」と思ったら消費者センターへ相談してみましょう

実際問題、この団体は設立当初から高IQ人材を企業に紹介して支援するというような内容を謳いながら、これまで一度もそうした紹介実績を上げてきていません。2020年9月頃から就職や転職の斡旋を開始したいと2020年3月2日に言ったきり、現在までその話は無しのつぶてのまま、ただただ有料IQテストの実施だけを行ってきています。

新型コロナや経済状況の悪化で計画がうまく行かないというのなら仕方がないとして、そもそも最初から計画に必要な許認可も得ていない、実績を上げたら違法になってしまうのだとしたら、それは随分と話が違いますね?

もしもこの団体の「企業に紹介」「就職や転職を斡旋したい」という言葉を信じてCAMSを受検し、「話が違う」「騙されているかもしれない」と不安を感じている人がいるならば、一度消費者センターに相談してみることをお勧めします。


消費者保護を目的とした法整備は確かに進んできており、2009年には消費者庁も設立され、消費者相談窓口も充実してきてはいます。しかし、嘘・大げさ・紛らわしい情報を使って我々消費者を勘違いさせ利益を掠めようとする輩は後を絶たず、またその手口は多様化と巧妙化を続ける結果、消費者トラブルの解決は未だに難しい問題です。

そんなトラブルに自分が巻き込まれず、また子供達が将来巻き込まれないようにするためにも、一番大切なのが「リテラシー」。正しい情報と知識を身につけて、賢い消費者、そしてその育成を目指していきましょう。

【2023年3月5日追記】この法人の職業紹介事業者登録は未だに行われていません!

この記事を書いてから1年半以上が経過したにも関わらず、2023年2月1日時点においても、この高IQ者認定支援機構は職業紹介事業者としての厚生労働省の許認可を未だに得ていないようです。

人材サービス総合サイトにて、全国の職業紹介事業の許可・届出事業者の中から事業者名に「認定支援」が含まれるものを検索した結果(検索日:2023年3月5日)


この財団法人の理事長である松本徹三氏は以前、「一刻も早く高IQ者を支援したい」というような説明をしていたはずなのですが・・・。


科学的に間違った知識を平気で披露している、言っていることとやっていることが明らかに矛盾している、理屈が合わない・・・そういう人達の言うことはやはり簡単に鵜吞みにせず、しっかり疑って、検証していく必要があるということをこの団体は教えてくれている、ということでしょう。

 

<IQが高いと何かわかるの?と疑問の方はコチラの記事もどうぞ>