努力する子の育て方

努力に勝る才能無し!努力の才能を育てる教育法、ボルダリングによる育児ハック実践、我が家の超個性的なギフテッド児の生態など

この国の公教育変革を願って、死にゆくIQ指標の棺に釘打ちを

 

 

ん・・・?もう今年も1週間が終わってしまったの?ついさっき年明けしたばかりじゃなかった・・・?えぇ・・・?という戸惑いを隠せぬ今日この頃、たぶん世の多くの方々も同じ様に戸惑っておられると信じて、新年明けましておめでとうございます。

昨年2022年、それは文部科学省が「特異な才能を持つ子供達」の存在を認め、教育現場でこれまで顧みられてこなかったギフテッドなんて呼ばれるタイプの個性も含む、より広い多様性を包摂するための教育改革事業推進を決定した、そんな画期的な年でありました。

本当に、色んなところで目にする機会が増えた「ギフテッド」。私は2018年からの新参者だけれど、それでもこの4年間で見てきた「ギフテッド」を取り巻く環境の大きな変化には嬉しいものがあります。これまで長いこと地道にギフテッド支援活動を続けてきた人達にとっては、どれほどの感慨でありましょう。 

非常に重要なのは、この文科省の事業が才能児だけに特別な教育を与える時代遅れの「ギフテッド教育」ではなく、歴史的に画一的な教育ばかりに注力してきたこの国の学校文化そのものを変革し、全ての個性への最適な教育支援を目指すものであるということ。


上手くいけば日本の教育史上で一大転換点となり得るこの事業、是非とも軌道に乗って欲しいと心から願う次第であります。 

新事業に膨らむ期待、消えない不安

2021年に文科省が「特定分野で特異な才能を持つ児童生徒~」の有識者会議を立ち上げた時には、これが日本の公教育を変える議論になり得ると感じて、非常に強い期待を抱きました。


それと同時にまた大きく膨らんだのが、文科省がまかり間違って、疑似科学を推進し始めやしないかという心配。なぜって、才能、そしてギフテッドという概念は、知能検査、IQというものを使って研究されてきた長い歴史があるからです。

いや別に、知能検査やIQという概念そのものがマズいわけでは決してありません。きちんとこれまで積みあがってきている先行研究結果を踏まえ、その有効性が科学的に議論されるのであれば何も問題無いのです。

でもね、うちの長男ケイがWISC-IVを受けたのをきっかけに、IQというものと初めて真面目に向きあって認識したのは・・・これまでも部分的に記事にしてきている通り、IQという指標から人間の才能や潜在能力を推し測ろうという試みの有用性なんて、100年以上に渡る研究の歴史の中でほぼ完全に否定されてきているということ。


そして、それにも関わらず、この国ではそうしたIQに関する残念な研究事実をほとんど無視する形で、根拠の無いデマばかりが広く流布されてきているという、極めて憂慮すべき状況があるということでした。

知能研究の専門家がほとんどおらず、メディアでは専門家と称する人達が少しファクトチェックしたら簡単にデマだとわかる情報を垂れ流しているこの国。


そのIQをめぐるリテラシーの惨状たるや、「MENSA会員100人で総IQ15,000」なんて唖然とする文言がテレビを通じてお茶の間に流れ、NHKがギフテッド特番で、何の科学的根拠も無いネットのデタラメなIQテストの点数を本物のIQかのように大真面目に紹介してしまうレベルなのです。 


さらには、そんな世間のIQリテラシーの低さにつけこむような疑似科学的IQビジネスが実際に跋扈しているというどうしようもない状況で、IQの扱い方を一つ間違えれば、この有識者会議への信頼は地に落ちて、議論の土台は即崩壊しかねないと危惧していました。


重ね重ね英断であったと思うのは、有識者会議と文科省が「特異な才能を持つ児童生徒」に関する議論において、IQという指標と向きあいつつも、慎重に距離を取った点。

科学的検証がなされた知能検査は確かに存在するにしても、IQというものが最早ほとんど疑似科学のタネにしかなっていないそんなこの国で、公教育政策にIQを絡めるリスクの大きさ。それを理解できている人達が有識者会議のメンバーで、本当に良かった。

 

 

学校に忍び寄るIQ疑似科学の恐怖

でもね、多様な子供達への個別最適な教育支援を目指すこの画期的な公教育政策がIQ疑似科学に汚染される可能性に関しては、実はまだまだ安心できないと思います。

全14回の会議の中で、「特異な才能」というものについて何度も「テストのスコア等で一律の基準を設けるようなことはしない」旨を強調してきた有識者会議だけれど・・・最終的にまとめた審議報告に、最後の最後滑り込みで「特異な才能を持つ子供達の特性を把握するためのアセスメントツール」の検証・研究についての記述が追加されました。 

https://www.mext.go.jp/content/20220929-mxt_kyoiku02_000025266_002.pdf


この有識者会議の審議内容を信用すれば、もちろんこの特性把握のためのアセスメントツールというのが「何かのテストで一律上位何%以上」みたいな運用になることは無いはずです。

そのはずですけど・・・今後この新規事業が推進される中で、特に判断や裁量が個々の教育現場へと委ねられていく中で、何の科学的裏付けも無いIQ疑似科学の類を現場のIQリテラシーの低さに付け込む形で無理やり押し込もうとする輩が出てくる可能性は、まだまだ全然ゼロじゃない。

心配し過ぎ?いや全くそんなことはありません・・・だって、「水からの伝言」や「EM菌」みたいな疑似科学が学校教育へしれっと紛れ込んだ実績がしっかりあるのが、この国だもの。


それに、一部地方の教育現場では、時代遅れで非科学的な知能検査利用を今でも実際続けていたりするのが、この国なんだもの。

2023年はIQファクトチェックをコツコツと

この国でのIQというものの扱われ方を見ていると、何十年も前に研究で否定されたはずの血液型性格分類が、研究素人の自称研究家の手により疑似科学として復活し市民権を得てしまった経緯を思い出さずにはいられません。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjpsy/advpub/0/advpub_85.13016/_pdf 


というか、もしかしたらIQは、ことこの国においては既に第二の血液型占いと言って差し支えないのかもしれないなんて思ったりもします。

あの血液型性格診断ですら公教育の現場に潜り込んだ例というのは無かったみたいだけれど・・・科学的根拠の無さはほぼ同レベルの「高IQなら○○」言説みたいなものが、まかり間違って教育現場に潜り込んだりしたら、それは本当に笑えない。 

これから始まる文科省の画期的な学校改革事業にIQ疑似科学が紛れ込む可能性の芽を今後少しでも摘んでいくためには、引き続きその成り行きを緩まずチェックし続けることが不可欠です。

第14回有識者会議の議事録を見ると、この事業の中で得られた知見などは、教育関係者だけでなく一般にも引き続き公開していく必要があるという認識が委員と文科の間で確認されているようなので、この辺りに引き続き注目していく必要があるでしょう。

特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第14回)議事録:文部科学省


それともう一つ、このブログでもう少しできると思っていることは、世に流布されている歪んだIQ神話の疑似科学性をつまびらかにしながら、この社会のIQリテラシー向上へとコツコツ貢献していくということ。

というわけで、2023年の今年はまたちょくちょくと、世にはびこる根拠のないIQ関連言説のファクトチェックを提供していきたいと思います。もはや死にゆくIQの棺桶に釘をガンガン打ち付けていく、そんな感じで。

別に知能検査やIQが嫌いなわけではないのです。私にギフテッドという概念を繋げてくれて世界を広げてくれたのはケイのWISC-IVの結果だったのだから、個人的にはある種感謝もしています。

でもね、だからこそ、この国でIQというものが全く正しく理解されず、疑似科学ゾンビのような異形の姿で弄ばれているのを見るのは本当に忍びない。

IQには、この国でもきちんと真っ当な科学的仮説として認知され、そしてその死を看取られて成仏していって欲しい。そんな風に思うんです。