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ギフテッドにすり寄る自称高IQ者支援団体の矛盾した言い訳(2)

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(1)では、一般財団法人 高IQ者認定支援機構(HIQA)の代表理事である松本徹三氏の当ブログへの「回答」をもとに、この団体の情報発信や活動に見られる矛盾点、信用性を疑う点などを指摘していきました。

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松本徹三氏の主張を読み、「高IQ者を迅速に支援するためには、とりあえずCAMSを使うしかない」というこの団体の言い分に、「それならまあ、しょうがない?」なんて思ったりする人もいるかもしれません。しかし、そんなことは実際全然ないのです。

今回の松本氏のコメントから読み取れるように、松本氏の今現在の主張は「高IQ者の迅速な認定と支援、活用」がこの団体の第一の目的であるということでした。

しかし、それが事実であるならば、ちょっと知能テストを知っている人間であれば誰でも思いつく、素晴らしい方法があります。そこで今回は、一般財団法人 高IQ者認定支援機構の人も必見、この団体がトンデモ知能検査CAMSによるニセ科学を推進せずとも、高IQ者をより効率的、迅速、正確に認定する方法を紹介していきましょう。

一刻も早く高IQ者の認定と支援を進めるために

松本氏のコメントから非常に強く伝わってきたのは、とにかく一刻も早く高IQ者の支援を進めたいという強い焦燥感でした。CAMSは似非科学の産物で出来損ないだが、まともなテストを作っている時間がない。そういう趣旨が読み取れました。しかしそれが本心ならば、CAMSみたいなゴミではなく、もっといい方法があります。そうです、WAISです。

WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)は、16歳以上対象の、世界で最も広く用いられているウェクスラー式知能テストです。CHC理論に基づいて作製されており、標準化も行われています。日本では昨年から、最新版のWAIS-IVの実施が始まりました。

私が提案する方法は、このWAISのスコアを使う、つまり、WAISのスコアで一定の基準をクリアしている人を高IQ者として認定する方法です。誰でも思いつく?そうですね、その通りです。

しかしこの方法は非常に単純ながら、高IQ者認定支援機構が目指す目標を達成する上で、似非科学知能テストCAMSに比べて、非常に多くの、そして大きなアドバンテージがあります。

まず、WAISはきちんと標準化されているので、正式な偏差型IQ、科学的な妥当性のあるIQを算出しているということ。正体不明のIQとは呼べない何かを算出するCAMSとは、信頼性と妥当性が段違いです。

またWAISは図形行列推理のみのCAMSと違い多数の下位検査を含み、多面的に人間の知能の推定を試みます。得られる情報量が多く、「高IQ者」の適性を今後分析していく上では、より多くの指標が利用できるWAISが圧倒的に有利です。

また、WAISの結果と仕事上のパフォーマンスの関係には、先行研究がたくさんあります。高IQ者の適性を研究し、その支援に役立てていく計画があるならば、なんの信頼性もなければ研究蓄積も無いCAMSを使うよりも、研究を推進する上で圧倒的にWAISが有利です(もっとも、高IQとジョブパフォーマンスの間の相関研究にはネガティブなものが多いのですが)。

そして、すぐに支援活動が始められます。わざわざ自前で試験をせずとも、高IQ認定の基準値を広く知らせるだけで、すでにWAISのスコアを持ち、基準を超える「高IQ者」で支援を求める人が集まってくることでしょう。わざわざCAMSを実施し、こつこつ少ない受検者の中から高IQ者を探すのとは、比べものにならないほど効率的で迅速です。受検者に新たにCAMSの受検料負担を強いる必要もなくなります。

さらにWAISのスコアを用いれば、この団体が支援したいと考えている、「社会で不遇をかこっている高IQ者」をとても効率よく探し出すことが可能です。現代の日本でWAISのスコアを持っている人は、なんらかの形で一時的にでも社会的な不適応を経験し、医療機関を受診した方が大多数を占めているからです。この点もCAMSにはない、WAISを利用する大きなメリットです。

そして、WAISは全国の医療機関で実施しています。CAMSのようにごく限られた地域でしか実施せず、その他地方の人が受検しづらいという機会的不平等の問題も十分に軽減されます。

 

 

もうこの団体がWAISを使えない理由は無いはずである

少し前まで、この団体は「高IQ者の正確な認定」を目標に、高IQ域を正確に測定するためのテストを作ると称してCAMSを開発していました。そして、恐らくWAISは高IQ域(IQ > 160sd15)を測定できないことをもって、利用できないと主張していました。松本氏による「機構設立の趣旨」の中には、こんな文言が残っています。

現在、IQを測定する試験としては、医療目的で運営されているWAIS等がありますが、これは高いIQを持つ人達を認定するものではありません。

しかし、最近のCAMSの情報公開によって、欠陥だらけのCAMSが高域IQどころかまともなIQを算出していないという事実がハッキリしました。こうした指摘をうけてか、松本氏の当ブログへのコメントには、こんな記載がみられます。

(従って、財団による実際の支援活動は、CAMSによって認定されたIQの数値が145であっても155であっても、大きく変わるものではありません。対象を絞らねばあまりに非効率になるので、一定の数値がクリアされていることは必要ですが、職場や研修の場を紹介するにあたっては、IQの数値の些細な違いよりも、むしろその人達の性格特性や興味の対象の方が重視されるでしょう。)

そして、「高IQ者の認定基準が削除された」という指摘に、この団体は以下のように回答しています。

当機構が知能検査を実施する目的は「広く高IQ者を発見し、支援していくこと」です。その実現には、IQ147sd15以上の方は勿論のこと、それ以下の方も広く支援できるよう努めるべきという結論に至りました。そのために、当面はカットオフラインを設けずに、より幅広く支援する体制を整えていくことに致しました。以前に告知した状態からの変更となりますが、何卒ご了承賜りますようお願い申し上げます。

IQ147sd15以下のスコアでも広く支援の対象とし、さらに一定の数値がクリアされていればIQ値の些細な違いはどうでも良い、これが事実であれば、IQ147sd15は十分にWAISの測定範囲内であり、WAISの測定上限の存在も関係ないということになります。WAISが使えない理由は、もうどこにもないはずです。

本来であれば、IQは検査時点でのその受検者の状態を示すだけなので、時間の経ったスコアで高IQ者認定というのは科学的に正しくないかもしれません。しかし、この団体の場合は大丈夫なはずです。代表理事自らがCAMSに関して、こう太鼓判を押しています。

一旦受けていただいた検査の結果が持つ価値は不変ですから、将来仮にその評価に上方修正や下方修正があったとしても、それは認定数値上だけのことであり、支援の機会は早い時期に得られた方が有利です。

出来損ないのCAMSの結果の価値が不変で、より信頼性と完成度の高いWAISの結果の価値を不変としないというのは不公平というか、不合理ですよね?

WAISスコアを利用する上で考え得る受検者側のデメリットは、保険適用にならない場合、WAISの受検には結構お金がかかるということです。また場合によっては予約待ちで時間がかかる場合もあります。

しかし、この団体の目標が社会で不遇をかこつ高IQ者の支援ならば、とにかく既に社会不適応を経験し、WAISスコアを持っている高IQ者を優先的に支援していくということにして、当面は何の問題もないのではないでしょうか?

カットオフラインを広く設定すれば、この団体が支援したいと考えている、社会で不遇を経験している(した)高IQ者が、すぐに十分な数集まることが期待できます。

まともなIQを算出しないIQテストCAMSで認定された高IQ者が、社会でどんな扱いを受けるか、よくわからない非科学的数値を根拠に、十分に信頼を勝ち得るかという懸念についても、WAISであれば全く心配いりません。

このように、現在発信されているこの団体の主張が言い訳ではなく全て事実であれば、IQを算出しない似非知能テストCAMSにこの団体が拘る理由に、正当性はもはや欠片もありません。WAISスコアを利用する方が、科学的に、正確に、迅速に、そして不遇な高IQ者をより的確に、優先して認定し、支援することができます。

色々書いてきましたけど、こんなアイディアは、IQテストについて少し知っていれば思いつく代物です。それなのに、この団体がIQの出ないトンデモIQテストのCAMSに拘る理由はなんなんでしょうね?

その矛盾するあたりに、この団体の本音があるんでしょうね。

*2019年10月28日追記*

この記事を読んで頂いた代替案様から、以下のようなコメントを頂きました。

この機構はキャッテルCFITのIQをCAMSのスコア計算に用いているのだから、もうそのままキャッテルCFITを利用すれば良いように思いますが、このアイディアは如何でしょうか?

これは全く素晴らしい、非常に現実的で良いアイディアだと思います。ご存知の通り、CAMSは相関係数が0.45しかないCattell CFITのスコアを線形等化することで、何の意味があるのかわからない謎の数値を算出し、IQと称しています。つまりこの操作は、Cattell CFITのスコアにあまり関係ない数字を混ぜて台無しにしているのと同じです。

Cattell CFITのスコアをこんな風に台無しにする形で利用し、IQでないものを算出するならば、いっそCattell CFITの算出するIQをそのまま使って高IQ者認定をすればよいというのが、代替案様のアイディアです。

Cattell CFITのIQ算出用の標準化データが50年前のもので、さらに日本で標準化が行われていないというのは事実で、そのIQの信頼性が非常に低いのも間違いない事実ではあります。しかし、そもそもまともなIQ値ではないCAMSの数値と比べたらずっとマシなのもまた、間違いありません。

そして、Cattell CFITは集団式検査であり、さらに実施には1時間もかかりません。3時間以上もかけて、Cattell CFITのIQに依存したIQではない数値を算出するCAMSを使うのであれば、Cattell CFITを実施する方が、よほど信頼性のあるIQ値が簡単に得られるということになります。

上で書いたWAISスコアを使う方法も、Cattell CFITを使う方法も、CAMSの意味がよくわからない似非IQを使っての「高IQ者認定」に比べて、科学的で、正確で、迅速で、多くのメリットがあります。

それにも関わらず、この団体がCAMSに拘る姿勢には、実に明確な矛盾が見て取れると言えるでしょう。

*2021年7月4日追記*

一般財団法人 高IQ者認定支援機構の謳う高IQ者支援方策の実態について、重要な情報提供を頂きましたの記事にしました。

松本徹三氏の言っていたこと、そしてこの団体の活動が結局どれだけ信用できる内容であったか、知りたい方は是非ご覧ください。

 

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