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「高IQ」ってどういうこと?知能発達曲線で見るその現実

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発達障害を心配して児童精神科を受診したら、知能検査の結果子供のIQが高いことがわかった・・・発達障害というものが非常にポピュラーになってきた昨今、そんな風にIQが高いと判明する子供の数も、恐らく増えていることでしょう。

しかし、知能検査の結果子供のIQが高いと説明されても、結局よくわからないのが「IQが高い」ということの実質的な意味ではないかと。

WISCについて調べると、例えばIQ130なら同学年の子供の50人に1人のスコア、上位2%に相当するスコアをとったことを示す、そんなことが色んなところに書いてあります。しかし、そこで多くの方が疑問に思うのは「WISCで上位○%のスコアだった」「同年代の上位○%のスコアだった」ということが現実問題何を意味するか、ではないでしょうか?

学校のテストならいざ知らず、知能テストの点数が上位○%だと言われても、その意味はよくわかりませんよね。私もうちの子のWISC-IVの結果を説明してもらった時は、「全体的にバランスのとれた高い能力を持っています」と言われたものの、ケイのスコアが具体的に何を意味しているのかは、全然ピンときませんでした。

漫画や小説などフィクションの世界では、IQは「天才」の枕詞のような存在です。「IQ200の天才」「IQ180の名探偵」といったように、IQは天才的な頭脳、ずば抜けた知的能力や推理力の高さを示す、「便利な数字」として使われています。

先日NHKで放送されたギフテッド特集「素顔のギフテッド」でも、IQは高い能力や才能のバロメーターかのような扱われ方をしていましたね。番組ではIQ130以上であれば「生まれながらに様々な才能を与えられた“ギフテッド”」としていましたから、IQ130以上であれば何か才能が与えられている、またはIQ130以上というのが何か特別な能力・才能そのものだと番組が言っているように感じた方も、恐らくいたことでしょう。

ご存知ない方はガッカリするかもしれませんが・・・以前の記事で紹介した通り、IQというものが特別な能力や才能の存在を示す指標としてあまり役に立たないことは、過去の研究で繰り返し示されてきています。

 

しかし、それならば、「IQが高い」ということは現実問題として何を意味していて、そこから子供の何がわかるのでしょうか?ここでは人間の認知能力の発達データに基づいて、「高IQである」という事実が意味すること、その現実を見ていきましょう。

注)以下、IQの数値はウェクスラー式の標準偏差15での正規化を念頭に説明しています。また、この記事の議論は全て妥当性と信頼性の検証が行われている標準知能検査で得られるIQを対象としています。標準知能検査とネットのIQテスト風パズルの違いについては以下の記事などをどうぞ。 

IQの高さは絶対的な能力の高さを意味しない

「IQ200オーバーの天才」といったように、創作物のキャラクター紹介では、IQはそのままその人物の「絶対的な知的能力の高さ」を意味する数値として扱われることが多いですよね。まるでドラゴンボールの「戦闘力」みたいな感じで、IQ200だからIQ180よりも頭脳明晰、といったように。

そんな風に、IQがもし何かしらの知的能力の絶対値を表すものであったならば、高IQというものの解釈は実に簡単なのですが・・・もちろんそれは、フィクションの世界の中だけのお話。現実的に、IQという指標の解釈はそれほど単純にはいきません。

IQというのは「指数」、すなわち相対的なものであり、「IQが高い」という事実が示す意味というのは、その人の年齢によって複雑に変わってきます。「IQが高い」ということの意味は、子供と大人でも全く違ってくるのです。

IQを解釈する上で必須の前提条件、年齢による人間の認知能力の変化

なぜ「IQが高い」という事実が持つ意味が、年齢によって変わってくるのでしょうか?それは知能検査で測定している人間の認知能力が、年齢によって大きく変化するものだからです。それでは、その変化の様子を実際の研究データで確認してみましょう。

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図1.Li et al. (2004) "Transformations in the Couplings Among Intellectual Abilities and Constituent Cognitive Processes Across the Life Span"より引用

(引用元文献)http://bernhard-hommel.eu/LifespanTrans.pdf


この図は、言語知識テスト、発話流暢性テスト、短期記憶テスト、メンタルマッピングテスト(ワーキングメモリ―と空間認知課題を含む)、推論テスト(図形や数列推理課題を含む)といった、WISCやWAISなどのウェクスラー式知能検査、またビネー式知能検査などの検査項目にも含まれる5種類の認知能力テストを、6歳から88歳までの幅広い年齢の被験者に実施して、各年齢での平均スコアを偏差値としてプロットしたものです。

見ての通り、 言語知識(Verbal Knowledge)、発話流暢性(Verbal Fluency)、短期記憶(Memory)、メンタルマッピング(Mental Mapping)、推論(Reasoning)、全ての認知能力テストの平均スコアは、6歳から10代を通じて20代までの間上昇していき、その後は下降していくことがわかります。 

子供のIQは結局知的発達の早さの目安だということ

この図でプロットしているのは各年齢での平均スコアですから、ざっくりと「IQ100」に相当するスコアの年齢による変化を表していると考えることができます。つまり、この図からわかるのは、同じ「IQ100」が示す認知能力の絶対値が、年齢によって大きく違うということです。

例えば、6歳のIQ100と20歳のIQ100、どちらもIQ100ですが、同じテストの成績として比べれば偏差値30と偏差値55というように、20歳のIQ100の方がテストの点数の絶対値としては圧倒的に高成績ということになります。同様に、6歳児のIQ130であっても、テスト得点の絶対値で比べれば20歳のIQ100には全く及ばないであろうことも、グラフから読み取れます。

このように知能テストの点数(素点)で考えてしまえば、6歳時点でのIQ130は、結局「6歳にしては高得点」ということでしかありません。IQ100の同級生が平均的に成長していけばそのうち普通にとるようになる点数を6歳時点でとったというのが、そのIQ130が意味するところ。

そして、これは別に6歳に限ったことではありません。8歳でも12歳でもまだ成長中の子供であることに変わりはなく、仮にIQ130でも140でも大人に比べた知能テスト成績の絶対値で言えば、もはや特筆すべき成績とは考えられなくなってしまいます。

要するに、子供の高IQが示すのは絶対的な知的能力の高さではなく、知能検査、認知能力テストにおいて上の学年の子供や大人が平均的にとるスコアを、低年齢時にマークしたという事実でしかありません。こうしたことから、子供のIQは一般知能、認知能力の発達の早さ、早熟性を示す指標として解釈するのが妥当であると言えます。

気を付けなければならないのは、知能検査で測定している認知能力は人間の知的能力のごく一部であり、子供のIQはあくまで知的発達の「目安」でしかないということです。子供のIQが高ければ、知能検査で測定している部分の知的発達は早いとみなせますが、知能検査で測定していないその他大部分の知的能力に関しては早熟であることを保証しません。また逆に、IQが取り立てて高くないからと言って、その子の知的発達に早熟な部分がないともまた言えません。

 

 

ウェクスラー式の偏差型IQでわかりづらくなったと思う子供のIQの意味

知能テストというものは、元々子供の知的発達度合を調べるために作られました。昔の知能検査はIQを「IQ = 100×精神年齢÷実年齢」という計算式で算出していて、IQ140なら実年齢の1.4倍相当の年齢のスコアをとったというように、子供のIQの数値の持つ意味が直観的に理解可能でした。

この精神年齢と実年齢の比から算出するIQは、小さな子供ほどIQの値が高く出やすく、また大人のIQが議論できないなど指数として欠陥が存在していたことから、「同世代の中での知能テストの得点順位」で算出する統計的に安定なウェクスラー式の偏差型IQにとって変わられ、現在ではあまり使われなくなりました(今でもビネー式の知能検査は一部でこの従来型IQ算出を行っています)。

しかし、偏差型IQになったところで、子供のIQに求められる意味は結局のところ知的発達の早さの目安くらいしかありません。だとすれば、従来の精神年齢という概念を使ってもらった方が、親が子供のことを理解する上ではわかりやすかった気がしますね。

混ぜたら危険:子供のIQと大人のIQ

「大人はIQなんて気にしても仕方ない」なんて以前の記事で書きましたが、せっかく子供のIQが示す意味について書いてきたので、大人のIQにはどういう意味が見出せそうか、一応考えてみましょう。

上の図を見ると明らかな通り、子供の認知能力が年齢と共に成長していくのに比べて、大人の認知能力は20代のピークを過ぎれば基本的には下降の一途です。年齢による衰えには人間誰しも逆らえません。これもまた、自然の摂理です。

しかし、加齢に伴って認知能力が低下していくことから、大人のIQもまた、絶対的な認知能力の指標にはなり得ません。大人のIQスコアの解釈にもまた、常に年齢を勘案する必要があるということになります。

大人の認知能力が年齢と共に低下していくことを考えれば、大人のIQには知的能力の衰退の早さ(遅さ)の目安としての意味がある程度見出せると言えるでしょう。80歳でIQ130ならば、一部の認知能力レベルはまだ20~30代並といったように。体力テストで「あなたの肉体年齢は○○歳レベルです」というのと良く似ていますね。

認知能力の成長が見込めない大人のIQは、どう頑張っても知能発達の早熟性の目安として利用できません。子供のIQと大人のIQはその意味するところが違い、別物として区別して議論する必要があるという点は、間違いのないことと言えます。

まとめ

以上で見てきたように、IQテストで測定している人間の認知能力が年齢に伴って大きく変化する都合により、IQという指数が持つ意味というのも、年齢によって変化します。子供と大人で「高IQ」の意味が全く違ってくるなんて、本当、IQって複雑な指標ですよね。

この記事ではあえてIQという指標のみに着目して「高IQの意味」を議論をしてきましたが、実際のところ知能検査の結果からは、子供の認知能力の発達傾向や得意不得意といったIQの高低以上に有益な情報が沢山手に入ります。

我が子をよりよく理解するために、IQという指標、そして知能検査の結果が持つ意味をきちんと理解し、冷静に活用していきましょう。

<知能検査のスコアについてさらに知りたい方はコチラの記事もどうぞ>