NHKの『Dearにっぽん』という番組で、ギフテッド特集が放送されました。興味のある方はNHK+で2月18日まで見逃し視聴可能です。
2019年の夏、初めてNHKがギフテッド特集を放送した時には「ギフテッド」という言葉がメディアに乗ること自体に非常に新鮮味があったけれど・・・それから3年半、文科省での「特異な才能児支援」有識者会議の話題と供にメディアで目にする機会が非常に増えたこともあって、番組名に「ギフテッド」とあってもそれほど話題にならなくなりましたね。
なんというか、それはこの社会に「ギフテッド」という概念が浸透していく過程を反映した自然なことであって、そして喜ぶべきことなのだろうとも感じます。
やっとのことでネットのナンチャッテIQテストが排除
ギフテッドの特集番組で、ネットのIQテストの、何の科学的根拠もないナンチャッテ"IQ"スコアをさも本物かのように紹介するという凄いことを2回連続しでかしたNHK。
もし今回同じことをやったら、それは間違いなく意図的なものだろう・・・なんて思いながら視聴しましたが、流石に今回はネットIQテストの名前やスコアは出てこなかったようで、ホッとしました。(私が見逃しているだけってことはないですよね?)
2年前のギフテッド特集番組『素顔のギフテッド』で、一次関数式で計算されていて何の根拠もない自称IQテストの数値を不本意な形でNHKに紹介されてしまったという大西拓磨さんに関しても、今回は本人が「一番正しい」としているWAIS-IIIの数字が紹介されていたようなので、そこはきちんと対応してもらえたようで良かったなと思いました。
まあ、大西さんのIQの紹介の時だけなぜか「IQ145以上」という不自然な説明がなされていて・・・これがNHKの、何の根拠も無いお遊びIQテストの数字に対する未練がましさの表れでないことを祈らずにはいられませんけども。
IQ情報を紹介する必然性が全くわからない内容
さて視聴した感想ですが・・・やっぱり今回も、「ギフテッド」という言葉を使う部分以外は、すごい能力を持つユニークな人物や天才キッズを紹介する昔からよくあるテレビ番組と変わらない印象でした。
日曜の午前中はよく『ミライ☆モンスター』を見ているので、今週は1時間早く似たような番組を見たな、と感じた部分が正直ありました。もし土曜の夕方放送だったら、今度は『博士ちゃん』と見間違えたかもしれませんね。
上記のNHK+の番組説明では、
小林都央くん(10歳)と大西拓磨さん(23歳)。ともにIQは130以上。特別な能力を持つという彼らの生きる世界とはどのようなものなのか。
なんて書いてありますけど、実際彼らの能力、ユニークさとIQとの関係性は番組中で一切説明されておらず、別に二人のIQがわからなくても何一つ困らない内容でした。
つまり実質的な内容としては「ギフテッド」という言葉もIQの説明も無かった去年の『ハートネットTV "浮きこぼれの子どもたち"』とほぼほぼ変わらず、もはや「ギフテッド」という名詞を使う本質的な意味は無いと感じました。
まあ、結局ギフテッドの個性は多様だし、IQというのはただの認知能力の指標な上に実に色んな環境要素で上下するような代物なのだから、その人物の個性や人となりの説明に大して役に立たないのは当然なんですよね。
ギフテッドという言葉を使わずに進められていく予定の文科省「特異な才能児支援」事業が軌道に乗ったとしたら、もはやこの国での「ギフテッド」という言葉は役目を終える、ということになっていくのかもしれません。
番組の中で紹介されていた小林さんと大西さんも、「ギフテッド」という言葉でラベリングされる違和感をはっきりと表明しておられたのが印象的でしたが・・・そんなラベリングを使わずとも多様な個性が十分に認知され受容される社会というのが、やっぱりあるべき姿かな、と改めて感じさせられました。