ケイは補助輪つき自転車に乗った経験がありません。30分の練習で、補助輪無しの自転車にいきなり乗れるようになりました。4歳の時です。
この自転車のスピード習得法は今ではかなり確立されていて、同じ方法を使えば、30分でかどうかはともかく誰でも補助輪を経ずに自転車に乗れるようになります。なので、このエピソードとケイのギフテッド的凸凹能力には、あまり関係はありません。
しかし、このケイの自転車練習は、我が家のギフテッド教育の原体験といえるものでした。そこで今日はこの自転車練習の話と、そこから私が得た教訓について書いてみたいと思います。
ストライダー効果で補助輪がいらなかったケイの自転車習得
まずは、30分で補助輪無し自転車に乗れるようになったタネ明かしからしていきましょう。ケイはストライダーという、ペダルが無く足で蹴って進むランニングバイクに2歳の頃から乗っていました。ストライダーで遊び慣れた子は、地面を蹴ってスピードに乗り、両足を地面から離して滑走するような乗り方をするようになります。
ケイも同じように、公園の小さな坂道で加速した後、足を付けずに遠くまで滑走する遊びを繰り返していました。そこで、4歳になったケイが「もっとスピードが出したい」と言ってペダル付きの自転車を欲しがった時、こう思ったのです。「バランスの取り方が十分習得できているなら、あとはペダルを踏んでスピードを出す練習だけで、補助輪無し自転車に乗れるはず」
ネットで調べると、ストライダ―の効果ですぐに自転車に乗れるようになった報告はやはりいくつもありました。念のため本人にも聞くと、最初は「みんなと同じ補助輪付きがいい」と言っていましたが、「補助輪無しの方がずっとスピードが出るよ」と言うと、「なら補助輪無しがいい」と気が変わりました。そこで、子供用自転車の補助輪を、最初から外してもらって購入しました。
ギブアップまで15分、結局乗れるようになるまで30分
そして、早速の自転車練習です。最初は後ろから少し支えながら、ペダルを回す練習をしました。思った通り、バランスに問題がないので、ペダルが回り始めるといきなりかなりの距離をまっすぐ走ることができます。
5分くらいペダル回しの練習をし、止まった状態から走りはじめる練習を始めた後のこと。動きだしの最初の一踏みに苦労し、何度も転ぶケイ。少し走りだしても、スピードが上がる前にヨタヨタして転んでしまいます。ここは少し練習が必要だな・・・と思っていたところに、練習開始15分でこの一言が。「もう今日は、自転車はいいかな。帰ってジュース飲んでテレビ見る」
たった15分の練習で、数回転んだだけでさらっと練習を打ち切ろうとするケイに、私の思考は巡りました。「無理に続けさせて自転車が嫌いになっては元も子もないが、あとほんの少しの練習で間違いなく乗れるようになる。ここで練習を止めて、変な諦め癖がつくのは嫌だな・・・」
色々と思案を巡らした結果、この日の私は普段やらないスパルタ指導に出ることを選択しました。「いいけど、そんなに簡単に諦めるなら、この自転車はお店に返してくる」。ケイは少し驚いて、「でも難しいんだよな・・・」とかなんとか言いながら練習を再開しました。
漕ぎ始める前に少し勢いをつける練習で、どんどん発車時に転ぶことが少なくなってきました。そして、練習開始から30分後には、自分で発車して、スピードに乗れるようになりました。
ランニングバイクを知らない人にとって、子供がいきなり補助輪無し自転車に乗れるようになる光景は、結構ショッキングみたいです。近くで自分の子供を遊ばせていた親御さんが、目を丸くして「今日初めての自転車でしたよね?!」と確認しに来たりしました。
自転車練習が教えてくれたギフテッド教育の心構え
ケイがたった30分で自転車に乗れるようになったことは、親にとっても中々のインパクトでした。確かに十分に能力はついていたし勝算はあったのですが、こんなに上手くいくとは思わなかったのです。そして強く実感したのは、親が子供の年齢や常識に囚われず、子供の能力をきちんと理解して教育をしていくことの意義でした。
別にケイが最初に言った通りに「みんなと同じ」補助輪付き自転車を買って、自分で外すと言いだすまでそのまま乗せておいても、何の問題も起こらなかったと思います。しかし、自転車に乗れるようになったケイは、それから毎日自転車に乗りたがり、みるみる内に大人でも疲れる距離を漕いで行けるようになりました。シングルギアでタイヤの小さい子供用自転車でその距離を走るのだから、すごい体力です。
公園では、小学生の子供たちに混じって自転車競走ができるようになりました。また、自転車に乗っているだけで、知らない人に褒めてもらえたこともたくさんありました(公園で頻繁に「何才?へー小さいのにすごいね」と声をかけられていました)。
ケイは元からストライダーが大好きだったので、褒められた経験がどれくらいケイの自転車への情熱に影響したかはわかりません。しかし、ケイの能力を考慮して補助輪なし自転車へ「飛び級」させたことが、ケイの世界を一気に広げ、より大きな成長をもたらしてくれたことは、間違いないと思います。
正直に言って、親が子供を先導し、進んだ内容をやらせるいわゆる「早期教育」には強い抵抗感がありましたし、今もそれなりにあります。しかし、ケイの自転車練習からは、子供は必ずしも自分の能力をきちんと理解していないし、その能力の生かし方の選択肢も知らない、だから、親がそれを理解して子供を導くことで、年齢相応な一般的教育よりも大きな効果を生み出し、子供の日常をもっと刺激的で楽しいものにできる、という教訓を得ることができました。
今でも、フラッシュカードみたいな「子供の能力開発」的なものはほぼ信じていません。人間の脳の発達に、自転車練習で言うところの「ストライダー」は存在しないと思っています。でも、もし子供が天性の能力と意欲を持っていて、それを発揮し始めたなら?それは自転車のアナロジーで言えば、ストライダー経験無しでもいきなりバランスが取れてしまう子です。であれば、少し親が頑張ってでも伸ばしたり有効利用したりしていって、子供の意欲が満たされ、また刺激されるよう世界を広げてあげるべき。私にこの考え方を納得させてくれたのが、ケイの自転車練習でした。
子供の天賦の才を生かした教育で効果的に子供を伸ばすというのは、まさにギフテッド教育の理念です。私がこの言葉を知ったのはごくごく最近のことですが、その理念だけはケイの自転車練習が私に教えてくれていました。
ケイが勝手にカタカナを読み始め、計算に関心をもって熱心に取り組み始めるなど非凡な特徴を見せ始めたのは、この自転車練習からしばらくしてのことです。その時は、ギフテッドという言葉がこんなに身近になるとは思ってもいませんでした。つまり、ストライダーは結果として、ケイにとっても私たちにとっても、非常に良い早期教育ツールになったのでした。
おまけ:おススメの自転車練習用ランニングバイク
昔はストライダー一択だったランニングバイクも、今は色んなものが出ています。もしこれから自転車練習用にランニングバイクを選ぶならば、ストライダーより下の「D-Bikemaster12」や「へんしんバイク」のようなブレーキ付きで、ペダル着脱が可能なものをお勧めします。
乗りなれたランニングバイクにペダルをつける方が、違和感なく自転車練習へと移行できます。それと、ブレーキは本当に大事です。ケイは、私がうっかりブレーキの存在を教え忘れたせいで、自転車に乗れるようになってすぐ「止まらない!」と言いながら公園のベンチに激突していました。幸いケガも何もなく良かったですが、ランニングバイクの時からブレーキはあった方が、やはり安心です。