文科省が今年立ち上げたギフテッドへの支援を検討する有識者会議の第4回が実施され、第2回の会議後に行われたギフテッド事例に関するアンケートの結果が公開されました。
特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議(第4回) 配付資料:文部科学省
早速文科省のサイトでアンケート結果をまとめた資料を読んでみましたが、子供の能力面でも困難面でも実に様々なケースが報告されていて、ギフテッド、そのおかれる状況、そしてその支援に対するニーズの多様さを文科省に理解してもらうために、非常に効果的な資料になったのではないかと感じました。
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/20211029-mext_kyoiku02-000018576_01.pdf
一つ一つの意見に目を通していて驚いたのは、他の人が書いた文章にも関わらず、自分の書いたものかと一瞬見まがうほど内容と論旨が瓜二つの意見がちらほら見つかったことです。
きっとケイと同じ様なタイプのお子さんをお持ちだったり、そういう子供に対する教育の在り方に関して私と非常に似た意見をお持ちの方が書いたものに違いなく、そういう人がこの国のどこかにいるのだと思うと、とても心強い気持ちになりました。
残念ながら今回も会議を傍聴することは叶いませんでしたが、会議資料を見ると松村先生がアンケートの結果の分類をされていました。
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/20211029-mext_kyoiku02-000018576_02.pdf
松村先生が資料の最初に明記されている通り、ああいった自由記述形式のアンケート結果から頻度や相関を類推・議論するのは難しい部分がありますが、それでも学校生活上の困難と突出した能力が結びついているケースの報告がそれなりの数に上っているという結果は、今後ギフテッドに関する支援の在り方を議論していく上で無視できないものになっていくことでしょう。
IQに関しても、松村先生の資料の中ではとても冷静な扱いを受けていて、文科省での議論の結果、子供にIQテストを受けさせる親が急増するといった極めて馬鹿らしいことは今のところ起こらずに済みそうで、安心して見ていられます。
会議の資料には福本理恵先生が提出された東大ROCKETに関するものも上がっていたので見てみましたが、こちらは主に芸術分野に関して、本当に色々な子供がいるということが実例つきで紹介されていて、会議の傍聴ができないことがとても残念になる興味深い内容でありました。
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/20211029-mext_kyoiku02-000018576_03.pdf
これまでの会議で委員の先生方も言及されていたことではありますが、今回のアンケートの結果やROCKETの子供達の話を見るにつけ、やはり日本でのギフテッドに関する教育支援の議論は、これまで無視されてきた「できる方向に多様な子供達」も含めて、子供の多様性に対応した効果的な教育環境をいかに実現するか、という方策の議論になっていくのだろうと感じます。
それは、これまでの均質性を重んじる日本の教育の転換を伴う可能性が高く、だからこそ今後の議論の進展が楽しみでなりません。
今回のアンケート結果についても下記の通り朝日で記事になっていましたが、この有識者会議が設置されて以来、ギフテッドに関する報道は確実に増えてきていると思います。しかし、現場の(特に公立小学校の)先生方の目に、こうした高い能力を持つ子供達の話題や問題がどう映っているのか、その辺りは非常に気になるところです。
不登校に関する文科省の調査では、本人と学校との間での不登校の原因についての認識が大きく解離していることが明らかになり、問題解決を阻む深刻な課題としてクローズアップされてきました。
文科省には、特定分野で才能や高い能力を示す子供達の事例を現場で実際に把握しているか、把握している場合にはどのように対応しているか、といった点に関する調査を今後全国の学校に対して是非実施してもらいたいと思います。
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