努力する子の育て方

努力に勝る才能無し!努力の才能を育てる教育法、ボルダリングによる育児ハック実践、我が家の超個性的なギフテッド児の生態など

努力の才能を引きだす「負けず嫌い」の扱い方

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負け、失敗などの悪い結果に対する物の考え方は、努力を続けていく上で非常に大切な要素です。あらゆる挑戦には失敗の可能性があり、勝負事には必ず敗者も生まれます。そうした現実を理解した上で、なお諦めず前向きな行動を続けられることが、努力を継続していくためには必要です。

「負けず嫌い」は負けや失敗などの局面をことさら嫌う性格傾向であり、一般的には、負けると癇癪を起す、ムキになって勝つまで続けるといった、失敗局面での負の感情の強い発露が特徴です。負けず嫌いな子供は些細な失敗や負けで感情が大きく昂ぶるので、日常生活においては色々と面倒なシチュエーションを生み出すこともあります。

しかし、この「負けず嫌い」という性質は、努力の才能を育てる上で非常に大きな手掛かりになります。実際、「一流のアスリートなどプロの競技者は必ず負けず嫌いである」ことがよく指摘されます。子供の負けず嫌いを読み解き、上手くアプローチすることで、努力の才能育成に生かしていきましょう。

負けず嫌いと努力の親和性の高さ

負けず嫌いの人が失敗局面で表出させる負の感情というのは、基本的に大きなストレスが生じたサインです。従って、負けず嫌いの人が失敗局面で激しい負の感情を生み出すということは、負けず嫌いの人は失敗局面でそれだけ大きなストレスを感じるということです。

そして、ストレスというのは人間にとって、その不快な状況を脱出するモチベーションとしての役割があります。よって、負けず嫌いの人は、失敗局面から脱出するための大きなモチベーションを生み出すことができる人、という側面を持っていることになります。

勉強やトレーニングなどで自らの成長を生み出すことは、失敗局面の脱出、つまり勝利や成功につながる最も妥当な方法です。つまり、負けず嫌いな人が抱える失敗局面に感じるストレスと、その解消法として自らの成長を生み出す努力は親和性が高く、この二つを上手くリンクさせていければ、負けず嫌いを努力の才能へと昇華させていくことができます。

負けず嫌いの「心の動きがよく見える」というメリット

負けず嫌いは、激しい感情の噴出です。泣く、怒る、不満、嫉妬心といった感情的な言動の表出がどんな形でも確認できないのであれば、負けず嫌いと言われることはそもそもありません。

失敗局面でこうした激しい感情的な言動が起こることで、周囲を不快にしたり、迷惑をかけたりすることもあります。しかし、努力の才能を育てるという観点では、こうした激しい感情の表出局面を子供が持っていること自体が、親にとって大変助かることだと考えられます。

以前の記事でも書いた通り、人間の思考プロセスや感情は、外から見て確認することが非常に難しいのです。従って、一般的に子供の性格特性の状態をモニタリングするのは難しく、行動を見ながら性格特性をチューニングしていくしかありません。


子供の思考プロセスを詳細に把握できるのであれば、努力する子の育成はそれだけ簡単になっていきます。従って、負けず嫌いの子供が素直にわかりやすく感情を表現してくれるという側面は、親にとっては大変ありがたいものなのです。

以上のような理由から、負けず嫌いは、その背後の思考プロセスが理解しやすく、かつ努力につなげていきやすいという点で、努力の才能育成の点で有利になる特徴と言えます。

 

 

「努力する負けず嫌い」を育てていく

負けず嫌いの人の中には、「負けると悔しいから勝つために努力する」という考え方が身についている人もいます。これは理想形であり、努力するという観点から言えばもはや何の心配もいりません。問題なのは、「努力しない負けず嫌い」です。

「努力しない負けず嫌い」を、努力へとつなげていくためにはどうすれば良いでしょうか?「努力しない負けず嫌い」と一口でいっても、「負けると癇癪を起す」、「とにかく負けを認めない」、「勝てないなら勝負しない」等々、それを特徴づける認知行動パターンというのは様々です。しかし、こうした認知行動パターンは全て、失敗する、負けるという状況で生じるストレスへの対処法と捉えることができます。

そして、どういう認知行動パターンを取るかという点は、個々人の心理状態と思考プロセスに依存します。従って、「努力しない負けず嫌い」を「努力する負けず嫌い」に変えていくためには、まずその心理プロセスを把握し、最終的に「努力する」というストレス対処法をとるように、性格特性のバランスをとっていく、ということになります。

「努力しない負けず嫌い」に特徴的な認知行動パターンを生む原因

勝ちたい、成功したいなら、それ相応の努力をする必要がある。これは全く合理的な推論です。つまり「努力する負けず嫌い」と「努力しない負けず嫌い」の違いは、失敗状況の認知の正確さと、そこから脱出するための戦略の合理性であると言えます。

「努力しない負けず嫌い」は、努力というこの合理的推論を導くプロセスのどこかに問題があると考えられます。

低い自己肯定感と悲観的な認知の歪み

自己肯定感が低いことでストレスを抱えている場合、失敗局面でさらなるストレスを抱えることで防衛機制が発動してしまったり、失敗局面を避けたり、自己受容できなくなったりすることで、「負けず嫌い」と認識される認知行動パターンが生じます。

また、非合理的で悲観的な認知の歪みは、失敗局面で必要以上に自己肯定感を低下させる認知によって、自己肯定感の問題を助長します。

例えば「失敗や負けそのものを認めない」という負けず嫌いのパターンは、負けた自分の状況を受容する、自己受容の困難さの問題であるといえます。また、「マウンティングで自分の優位を築こうとする」パターンは、他人を利用して自分の低い自己肯定感を補う行動そのものです。

こうした自己肯定感に関わる問題から「負けず嫌い」とされる特徴が生じている場合、低い自己肯定感や悲観的な認知の歪みの問題をまず解決していかなければ、努力する子には育てていけません。

「低い自己肯定感をバネに努力する」という状況もあり得ますが、自己肯定感の問題は努力するしない以前に心の健康を大きく損なうことにつながる可能性が高いです。まずは自己肯定感を下げている原因を解決し、自己肯定感が回復していくように働きかけていきましょう。

こうした自己肯定感と自己受容、ストレスの関係性などについては、以前の記事でご紹介しました。興味がある方は読んでみて下さい。 

完璧主義的な認知の歪み

負けず嫌いの認知行動パターンの中には「勝利」「成功」という結果へのこだわりが、完璧主義的に異常に強くなった結果生じていると考えられるものがあります。この例としては例えば「絶対勝てる状況でなければ勝負しない」「負けそうになるとルールを変更する」「手段を選ばず勝とうとする」といったものが挙げられます。

こうした言動は「自分は絶対に勝たなければならない」「勝たなければやっている意味がない」というような、結果に関する強い思いこみに端を発すると考えられます。一般的に、こうした思いこみにはしっかりとした根拠はなく、論理的に飛躍した「すべき思考」「全か無か思考」と呼ばれる認知の歪みとみなすことができます。

結果にばかりこだわっていると、過程に目を向けることができません。努力とは過程であり、結果にこだわっている状態では、努力するという行動に価値を見出せる可能性はとても低くなります。

そこで、結果への完璧主義的なこだわりがある場合には、そのこだわりの原因である認知の歪みへのアプローチが必要になります。例えばゲームであれば、勝ち負けの前にゲームをすることそのものや、上達の過程が非常に面白いという価値観、認識を与えていく必要があります。普段の生活の様々な場面で、結果ではなく子供の成長にフォーカスした関わり方をすることで、こうした完璧主義的なこだわりの発生を抑制することができます。 

経験や感情コントロール能力の不足

幼児期などに非常によく見られる、負けると怒ったり癇癪を起こしたりするパターンの主な原因と考えられます。幼児では、勝ち負けの経験にも乏しく、また自分の感情を上手くコントロールするための物の考え方が身についていません。結果として、ただじゃんけんで負けただけで号泣したり、癇癪を起こしたりと、結果の重要性に相応しくない激しい言動が引き起こされて、「負けず嫌い」と認識されることになります。

基本的には勝ち負けを多く経験していく中で、感情の上手なコントロール法は自然と身についていきます。しかし、その過程で上記の認知の歪みや自己肯定感の問題が生じてくる可能性もあります。子供が小さいうちから、努力の成功体験をたくさん積ませていくことが重要であると考えられます。 

最後に

「負けず嫌い」は良く見ていくと、結構色々な原因で生じているプロセスであることがわかります。しかし、それらが全て「負けず嫌い」の一言でまとめられることからもわかるように、負けず嫌いの特徴というのは、似たような局面で同じように生じるという特徴があり、それゆえに観察、分析しやすいものです。

子供の性格特性の状態を把握するために、また努力する子に育てるために何をどうしていくかのヒントを得るために、負けず嫌いは大きな手掛かりです。よく分析して、利用していきましょう。