前回、ボルダリングには一般的な習い事とは違う親のストレス軽減のメリットがあるという話を書きました。
ここで書いたメリットの多くは、「スクールやクラブにまかせず、親が自分で子供をジムに連れていく」というスタイルから得られるものです。するとやはり心配になるかもしれないのは、「ボルダリングを全く知らない親でも大丈夫なのか」という部分です。
しかし、大丈夫です。全く問題ありません。未だにボルダリングど素人の私が言うので間違いないのです。私はむしろ、ボルダリングを育児ツールとして使う上では、素人親の方が向いているのでは、とすら考えています(これについては次回の記事で触れる予定です)。
そこで今回は、ボルダリング育児に親の知識や経験が必要ない理由を説明した上で、それでも予習したい人向けに「最初これだけ知っていれば十分」なボルダリング知識を紹介したいと思います。
ボルダリング育児に親の知識も経験も必要ない理由
ボルダリングの基本的なことは全部ジムの人が教えてくれる
ボルダリングがメディアに取り上げられる機会は最近非常に増えてきました。それでも、ボルダリングはやはり新興スポーツです。その人口は今日爆発的に増えていると思いますが、「誰もが知っている」「一度くらいやったことある」という物では決してありません。
この点は、ボルダリングをよく知るジム経営者やスタッフも非常によく心得ています。その証拠に、日本全国ほとんどのボルダリングジムでは、初めての人向けの体験コースを設けています。どこのジムでも前提として「ボルダリングについて本当に何も知らない人がたくさんいる」という状況把握が、きちんとなされています。
ですから、はじめての人向けの体験コースを申し込めば、何も知らなくても全部ジムスタッフが教えてくれます。ジムの管理はジム側のお仕事ですし、体験の人に楽しんでもらわなければ、ジムはリピーターが得られません。なので、ジムの人は基本的なルールや、安全、マナーについて非常に丁寧に説明してくれます。初歩的なことや、登り方のコツなども質問すれば優しく教えてくれます。
なので、親子揃って何も知らなくても、臆する必要は皆無です。ジム側でも、何も知らない人が来るのが当たり前なのです。心配だったら初心者コース予約の時に、「何も知らなくても平気ですか?」と聞いてみましょう。まず間違いなく「教えるので大丈夫です」と返ってくるはずです。
直感的に理解できるボルダリングジムのルールとマナー
ではボルダリングジムで教わるルールやマナー説明というのはどれほどのものか、というと、はっきり言って非常にシンプルです。ほとんどのジムで、最初の説明は10分くらいで終わります。そしてそのほとんどの時間が、ボルダリング中の事故とケガを防ぐための説明です。
この安全上のルール説明は本当に大切ですから真剣に聞きましょう。しかし、まあ当たり前のこと、直感的に理解できる内容がほとんどです。ボルダリングの競技としてのルールは、さらにシンプルでより直感的に理解できます。
一応予習したい人のために、簡単な安全ルール、競技ルールについては一番下に書いておきます。しかし、安全ルールに関しては各ジム独自のものが存在するので、必ずジムでの説明をよく聞くようにしてください。
親は基本見ているだけOK。しかも快適。
もし子供をプールに連れていくならば、親も当然水着でプールに入らなければなりません。しかし、ボルダリングでは親は本当に見ているだけでOKです。ほとんどのボルダリングジムでは、登る子供を見ている親は、見学者扱いでジムの中に入れます。
壁のそばには必ず待機できる空間が広く設けてあるので、親はその待機スペースで座って、ゆっくりと間近に子供のボルダリングを見ていられます。しかも、今どきのジムは大体冷暖房完備で、待機スペースでの飲食も自由な所が多いです。
親がやるのは、子供が危ないことをしないか、目を光らせていることです。子供が不用意に他の登っている人に近づいたり、危ない登り方をした時は、親が出ていって止めたり助けたりしましょう。でも自分でルールが守れるようになれば、本当にあとは見ているだけになります。アスペ+ADHD診断持ちのうちの多動児でもルールを守れるようになるのに時間はかかりませんでしたから、そんなに心配いらないと思います。
最初からこれだけ知っていれば十分なボルダリング情報
最初からこれだけ知っていれば十分すぎる用語集
ホールド
ボルダリングジムの壁についている色形様々な突起物。これを使って壁を登る。
課題
壁上の指定されたホールドで作られた、スタートからゴールまでのコース。その課題で指定されたホールドのみを使って登れればクリアとなる。各課題はテープの色や形、番号で他の課題と区別されており、課題によって登る難しさ(グレード)が設定されている。
スタートホールド
各課題のスタート地点となるホールド。1つの場合が多いが、2つある場合もあるのでよく探しましょう。
ゴール
各課題の終点。ホールドではなく壁の上端がゴールになっている場合などもあるが、初級の課題は大体つかみやすいホールドがゴールになっている。
足自由/手足限定
手で持つホールドのみが指定され、足はどのホールドに置いてもよい課題を「足自由課題」と呼ぶ。逆に足を置いてもよいホールドも指定されている課題は「手足限定課題」と呼ばれる。一般的に手足限定の方が足自由よりも難しい。足自由と手足限定の区別の仕方はジムによって違い、「6級課題までは全部足自由」のようにグレードで統一されているパターンや、各課題に「足自由/手足限定」の表記があるパターン、全ての課題が手足限定のジムなど様々なため、説明がなければ確認しておくと良い。
グレード
各課題に設定された難易度。ほとんどのジムでは段級グレードといわれるものが使われていて、10級、9級~2級、1級、初段、二段~という順に難しくなっていく。大抵のジムでは、同じグレードの課題はテープの色やホールドの色で区別されていて、自分に合った難易度の課題が探しやすくなっている。しかし使われているテープやホールドの色とグレードの対応はジムによって全くちがうため、最初に確認しておく必要がある。
マット
ジムの壁の下に引かれたケガ防止のためのぶ厚いクッション。
クライミングシューズ
壁や岩を登るための靴。靴の底や周りにラバーが張ってあり、壁やホールド上で滑りにくいよう作られている。最初はレンタルのもので十分に登れます。
チョーク
ジムでよく見かける白い粉。炭酸マグネシウムが主成分の粉末で、手汗を吸収する効果がある。子供は大体つけてみたがるが、最初の方で登る課題はつけてもつけなくても正直変わらないので、よほど手汗がすごい人以外は気にしなくても大丈夫。
基本的なボルダリングのルール
1.スタートホールドを両手で持った状態で、両足をホールドに乗せたらスタート。スタートホールドが1つの場合は必ず両手で持ってスタートする。スタートホールドが2個ある場合は、それぞれの手で1個ずつ持ってスタートする。足はホールドではなく、壁に乗せていても大丈夫。
2.指定されたホールドのみを使って登る。特別に指示がない場合、ホールドではない壁の部分は自由に触ってよい。ただし、壁のカドは指示がない場合は触っていはいけない。
3.ゴールのホールドを両手で持ち、バランスを安定できたらクリア。ゴールを片手でしか持てなかった場合や、両手で持ってもすぐに落ちてしまった場合は登ったと認められない。大体2,3秒静止していられれば誰にも文句は言われないハズ。
基本的な安全のためのルール・マナー
ボルダリングは事故やケガのリスクを伴うため、ボルダリングジムでは安全は何よりも重視されます。各ジムで必ず最初に安全のためのルールを指導されますので、きちんと守って事故が起こらないように注意しましょう。
隣の人と十分な距離をとって登る
落下時の接触などの危険を防ぐため、隣の人とは十分な距離をとって登ります。ジムによって3m以上などと決まっている場合や、一つの壁を登るのは一度に一人だけというルールのジムもありますが、いずれにしても子供が隣の人と近づいて登ることがないように注意をします。
マットの上に乗るのは壁に登る人だけ
休んでいる人や順番を待っている人、課題を下見している人などはマットの外の待機スペースで行います。マット上は登っている人が落ちてくる可能性があり危険なので、登っている人以外は絶対に乗らないようにしましょう。
登っている人の下に入らない
誰も登っていない壁に近づく際など、他の壁を登っている人の下を通らないように気を付けましょう。特に子供は視野が狭いので、上を登っている人に気づかない場合があります。子供が登りに行く場合には、登っている人の下に入らないようによく注意する必要があります。
壁の上の方から飛び降りない
壁の下にはマットが敷いてありますが、やはり高い所から飛び降りると衝撃で関節などを痛めるリスクが上がります。降りる時はなんのホールドを使っても良いので、高い所から飛び降りず、下の方まで降りてからジャンプするようにしましょう。
待っている人と譲り合う
壁を登れる人数に制限があるため、ボルダリングジムでは基本的に順番待ちが発生します。後ろの方で同じ壁の課題を登りたい人が待っていることが多いので、一度落ちたらマットから降りて、他の人に順番を譲りましょう。