努力する子の育て方

努力に勝る才能無し!努力の才能を育てる教育法、ボルダリングによる育児ハック実践、我が家の超個性的なギフテッド児の生態など

子供の社会性と自信が育まれるボルダリングジムという場所

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私は別に、クライマーでもなんでもありません。うちの子供にくっついて、ボルダリングジムに「通っているだけ」の人間です。しかし、そんな私から見ても、ボルダリングジムというのはとても心地の良い場所だなと感じます。別に座り心地の良いソファがあるわけでも、ドリンクバーのサービスがあるわけでもないんですけど、結構何時間でもいられてしまいます。

子供のクライミングが見ていて本当に楽しいというのは、大きな理由としてあります。でも、たぶんそれだけではありません。いくら子供のクライミングが見ていて楽しくても、ジムそのものが居づらい場所だったら、行きたいとは思いませんからね・・・。ボルダリングジムの居心地の良さというのは、ボルダリングジムを満たしているフレンドリーな空気や、そこにいる人達のほどよい距離感といった、ボルダリングジムの持つユニークなコミュニティ特性から来ている部分が大きいと思います。

子供には、しっかり自分というものを持ち、他人のことを尊重できる社会性を身につけて欲しいと常々思っているのですが、このボルダリングジムの居心地の良さというのは、まさに子供が自分の価値観を確立し、他者の価値観を尊重する社会性を身につける上で、格好の環境の証であると感じます。そこで今回は、なぜボルダリングジムが子供の社会性教育に好影響を与えると考えられるか、そのあたりを詳しく書いてみたいと思います。

ボルダリングジムのフレンドリーでポジティブな空気

まずはボルダリングジムの空気感を、少し説明しておきたいと思います。

ボルダリングジムに初めて子供を連れて行ったとき、ボルダリングジムというのがどういう空間なのか全然わからなくて、結構緊張しました。しかし、そうした緊張感が解けるのに、さほど時間はかかりませんでした。これは、ボルダリングジムの文化とも言える、開放性とフレンドリーさのおかげです。

ボルダリングジムのフレンドリーさと開放性の象徴、それはジムの中で良く飛び交う「ガンバ!」「ナイス!」の掛け声です。「ガンバ」というのは「頑張れ」の意味で、壁を登っていて難所に差し掛かった人を応援するための掛け声です。難所を見事にクリアしたら、「ナイス」の声がかかります。

初めてその声を聞いた時は、当然顔見知り同士で応援しているのだと思いましたが、すぐに違うと気づきました。知り合いなんて一人もいない、うちの子供にもガンバの声が飛んできたからです。ボルダリングジムでは、こうした声が掛かるのは日常茶飯事です。常連かどうか、知りあいかどうかに関わらず、頑張っているなと思ったらすぐに応援の声をかける、とてもフレンドリーでポジティブな空気があります。そして面白いことに、このフレンドリーでポジティブな空気は、どこのジムでも概ね共通しています。

この空気のおかげで、ボルダリングジムではすぐに知り合いが増えます。「ガンバ」「ナイス」の声かけや、同じ課題を登っていることをきっかけに、自然と会話が始まります。実際、ボルダリングジムでは、お客さん同士の交流が本当に盛んです。お客同士で教え合いながら登っている場面は全く珍しくないので、最初のうちはお客かスタッフかの区別がつきにくいという問題すらあります。うちの子に親切に色々教えてくれるので、てっきりスタッフの人だと思っていたら、同じお客さんでびっくりなんてことも、実際にありました。ボルダリングジムは、ボルダリングを媒介に、人の交流を活性化させてくれる場所だと思います。

だからこそ、初心者でも、子供でも、ボルダリングジムのコミュニティに馴染むのに、それほど時間はかかりません。そして、その空気に慣れた子供たちもすぐに、「ガンバ」「ナイス」と言いながら、物おじせずに色んな人とコミュニケーションを図るようになっていきます。

大人との交流の中で磨かれる子供の社会性と自信

コミュニケーションを刺激するボルダリングジムで、子供が経験できる特別なこと。それは、普段の生活では決して出会わない、色々な大人との交流です。他所の学校の子供たちとの交流ももちろん大事ですが、子供の社会性の成長にとって、親や学校の先生以外の大人との交流というのは、とても貴重で、大切な経験です。

親でも先生でもない様々な大人との交流は、多様な価値観を知ることで子供の視野を広げ、そしてコミュニケーションの非常に良い訓練になります。しかし、特に小中学生ごろの子供たちにとって、親や学校の先生以外の大人との交流機会は、日常の中にほとんどありません。

一般的に、年齢による発達段階の差、能力差は、大人と子供のコミュニケーションを非常に難しくする高い壁です。それ故に、子供は子供同士、大人は大人同士という構図がどこへ行っても自然とできあがってしまい、子供がよく知らない大人とコミュニケーションをとれる場所というのは、通常ほとんどありません。

しかし、ボルダリングジムでは、子供が大人と比較的対等なやりとりができるという特徴があります。そのために、子供は色んな大人とのコミュニケーションを通じて、社会性やコミュニケーションスキルを伸ばしていくことができます。

子供が子供扱いされづらいボルダリングジムの特殊性

なぜボルダリングジムでは子供が大人と交流できるのか。一番の理由は、クライミングという競技上の特性にあります。クライミングは、年齢差や筋力差による有利不利が他のスポーツに比べて断然小さい競技で、子供の軽さや体の小ささ、柔軟さが、大きく力が強い大人に対してより有利に働く場面というのも頻繁にあります。

また、子供は大人よりも上達スピードが断然速く、同じ経験年数であれば大抵子供の方が上手です。実際大人より登ってしまう子供もジムにはたくさんおり、他のスポーツに比べると、クライミングは子供と大人が実力的に無理なく張り合える競技なのです。

つまり、ボルダリングジムで壁の前に並び立つとき、年齢差、大人か子供かという問題は、クライミング能力の差という問題に比べて、とても小さな問題になります。実際、実力的に近い大人と子供が、一緒になって同じ課題を攻略しようとしている場面も見かけますし、自分が登れない課題について、子供の登り方を参考にする大人というのもいます(私がそんな一人です)。

ボルダリングを介すれば、大人と子供のコミュニケーションの距離はぐっと縮まります。つまりボルダリングは子供と大人の橋を渡すコミュニケーションツールであり、ボルダリングジムは、子供と大人のコミュニケーションを促進する場として機能することで、子供の社会性の発達に、一役買ってくれるのです。

そして、ボルダリングで実力的に大人と競え、大人と一丁前にコミュニケーションがとれるという事実は、子供にとって大きな自信の糧となり、さらに積極的なコミュニケーションを後押ししてくれます。

 

 

ボルダリングで身につく多様性の理解とリスペクト

大人を含むより多様性に富んだコミュニティに子供が参加できるボルダリングジムでは、子供は学校やその他の習い事では中々学べないことを、身をもって学習することができます。それは、人間の個性、多様性と、それをリスペクトすることの大切さです。

昨今、社会における多様性の理解と尊重は、社会に出る上で当然求められる社会性の一部と認識されつつあります。しかし、「皆と同じことを同じようにすることが大事」という価値観を未だに引きずる日本の学校教育やお稽古事では、こうした多様性を尊重する価値観の習得は、難しいものがあります。

ボルダリングジムで、大人も子供も混ざった中でのクライミングにおいて、自然と、しかし非常に明確に強調されるのは「みんな違う」という点です。皆背丈も筋力も柔軟性も違う中で、どうやって同じ課題を登るのか。そうした身体能力の違いによって、同じ課題でもクリアの仕方には当然個性が出ます。しかしボルダリングでは、きちんとゴールしさえすれば、細かい登り方の違いは独創性を評価されこそすれ、問題視は絶対にされません。

大人と子供の体格差と同様に、細かい身体能力の差というのはボルダリングの場合一概に有利や不利を生む特徴とは言えません。つまりボルダリングにおいては「みんな違うし、それで問題ない」という価値観が、非常に明快です。従って、ジムで年齢も体格も、個性も違う様々な人達と一緒にボルダリングをする中で、「みんなちがって みんないい」という考え方は、ごく自然に子供に刷り込まれていくことになります。

多様性の尊重が高める子供の自己肯定感

ボルダリングジムへ行くと、実に色んな人がいます。ベテランの人、初心者の人、社交的な人、一言もしゃべらず黙々と登る人、一つの課題をずっと登っている人、登っている時間よりおしゃべりの時間の方が長い人、子供好きな人、子供嫌いな人。そして私のように、全く壁を登らない人まで。

ボルダリングジムにいて本当にいいなと思うのは、そういう色んな人、色んなスタイル、楽しみ方の存在が当たり前に認められ、自由と個性がしっかり尊重されているところです。もしかしたら中にはいるのかもしれませんが、ジムで他の人にケチをつけたりくさしたりしている人は、いままで見たことがありません。

実は、多様性尊重の意識を持つというのは、最終的に自分の自信、自己肯定感を高めることにもつながります。それは結局のところ、「みんな違って、それで良い」という考え方に「自分は自分、これでいい」という考え方が含まれているからに他なりません。

他人の個性や価値観を尊重できるというのは、自分の価値観の軸、自己肯定感がしっかりとある証拠なのです。よって、そうした考え方がコミュニティ意識として存在するボルダリングジムという場所は、子供にその大切な土台を作る大きな助けになってくれるものだと考えられます。