努力する子の育て方

努力に勝る才能無し!努力の才能を育てる教育法、ボルダリングによる育児ハック実践、我が家の超個性的なギフテッド児の生態など

理論から考える子供の好奇心を育む方法・前編

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育児をしていると、好奇心というものの偉大さに気づかされます。好奇心というエネルギーを使って、親が想像していなかったようなことをする子供は、それほど珍しくありません。歴史的な偉人や社会的な成功を収めた人たちのエピソードを読んでも、そういう人たちは大抵好奇心旺盛です。

好奇心のエネルギーは、自律的、自発的な行動の原動力になるものです。つまり、努力する子を育てていく上では、非常に重要な要素です。好奇心の旺盛さは一種の能力と捉えることもできます。子供の旺盛な好奇心を上手く利用できたならば、子育てにおけるメリットは計り知れません。

それでは、好奇心はどのようにして生まれるのでしょうか?好奇心のエネルギーを育児の中で有効活用していくためには、どうすればよいでしょうか?

今回は、好奇心というものの理解を通じて、育児の中で子供の好奇心を育み、努力する子の育成に上手に利用していく方法について考えていきたいと思います。

前編となるこの記事では、まず好奇心とはどんなものか、好奇心が生まれるメカニズムのというものを見ていきましょう。

好奇心は人間が生まれ持った性質

「好奇心」とは、新しいもの、未知のものについて知りたい、情報を得たいと思う欲求です。公園で見つけた初めて見る虫を図鑑で探してみたり、本で読んだ実験を自分でやってみようとする。そうした、物事の経験や情報の獲得の原動力となっているのが、好奇心です。

なぜ人間は好奇心を持つのか。好奇心は、人間の根源的な性質の一つです。人間というのは、情報を欲する性質を持って生まれてくる生き物なのです。

人間は情報を欲する生き物であり、なんの情報も手に入らない状態は、人間にとって苦痛です。自分がもしも一面真っ白な壁の、窓も何もない部屋に閉じ込められたと想像してもらえれば、苦痛だということはすぐに理解できると思います。

人間が基本的に情報を欲する性質を持つということは、以前の記事でもご紹介したHeronの感覚遮断実験の中でも明確に示されています。この実験では、目隠しやヘッドホン、手や指の先を覆ってしまうなどして、被験者に対して感覚情報の入力を遮断を行いました。

そして被験者の行動を観察したところ、被験者はずっとじっとしていることに耐えられず、歌や口笛、腕にはめられた覆い同士をぶつけて音を出すなど、様々な刺激を求める行動をとるようになりました。

さらに、被験者のヘッドホンを外し、被験者が本来好きでもない古いレコードを2分間だけ再生するボタンを与えたところ、被験者は何度もボタンを押して、古いレコードを再生し続けるようになりました。

こうした実験結果は、人間が情報を常に求め、情報の不足を苦痛に感じる性質を持っていることを示しています。つまり、人間は生まれながらにして、好奇心の強い生き物なのです。

 

 

拡散的好奇心と特殊的好奇心

好奇心についての心理学的研究では、好奇心にも性質の違う2つの好奇心があると考えられています。一つは「拡散的好奇心」と呼ばれるもので、これははっきりとした方向性を持たず、様々な情報を広く求める行動の原動力です。

例えば、なんとなくテレビを見る、待合室で置いてあった雑誌に手を伸ばす、こうしたいわゆる「暇つぶし」の、内容に関わらずとにかく情報や刺激を求める行動の原動力が、拡散的好奇心です。

拡散的好奇心ははっきりとした方向性を持たないとは言うものの、完全にランダムなものでもありません。例えば暇つぶしに選ぶテレビ番組や本の内容にも、個人の趣味や好みというものが出てきます。どんなに暇でも見る気が起きない番組というのもあると思います。従って、拡散的好奇心には方向性はなくとも、ある程度の範囲があると考えられます。

もう一つの好奇心は「特殊的好奇心」と呼ばれています。これは、拡散的好奇心とは逆に、特定の内容に関する、はっきりと方向性を持った情報収集の原動力です。特殊的好奇心は、特定の情報に関する疑問や、情報と自分の持つ知識とのズレに向けられる好奇心であり、そうした疑問や情報のズレを解消するための、更なる情報収集につながります。

例えば、アサリの味噌汁に小さなカニを見つけて入っていた理由を調べるとか、サンタクロースが煙突のない家に侵入できる理由を親に聞いてみるとか、こういった情報収集は特殊的好奇心によるものと言えます。

拡散的好奇心と特殊的好奇心は、それぞれ広範囲の方向性のあまりない情報収集と、物事を深く掘り下げる情報収集という質の異なる行動のモチベーションであり、この2つの好奇心によって、我々はバランスよく様々な情報を手に入れることができると考えられます。

それでは、こうした好奇心は、どのように生じるのでしょうか?次は、拡散的好奇心と特殊的好奇心を生み出す条件について見ていくことにしましょう。

情報入力の不足が拡散的好奇心を生む

拡散的好奇心は、情報や刺激の不足によって生み出されると考えられています。感覚遮断実験で示されたように、人間は元来情報を求める性質を持ち、情報の不足は不快感を引き起こします。

しかし、読書をするならば喧騒の中でなく静かな部屋を選ぶように、人間は情報の入力の過多もまた不快に感じます。つまり、人間が求める情報入力には、過不足のない、最適なレベルが存在しているということになります。

退屈な時、暇な時、つまり最適な情報入力レベルに対して情報入力量が不足した時、感覚遮断実験で被験者が見せたように、人間は「暇つぶし」を始めます。暇つぶしは方向性のはっきりしない情報収集や刺激を生み出す行動であり、その原動力は拡散的好奇心です。つまり、拡散的好奇心は情報入力量が最適レベルよりも不足した時、それを最適レベルに近づけるために生じる、と言うことができます。

「不調和」が特殊的好奇心のカギ

特殊的好奇心は情報への疑問や知識とのズレを解消する方向への情報収集の原動力です。こうした疑問や知識と情報のズレは「不調和」と呼ばれ、特殊的好奇心を刺激するカギとなります。

不調和が原因で起こる情報収集行動は、不調和の解消という明確な目的を持ち、積極的かつ持続的であることが知られます。しかし、生じた不調和が大きすぎる場合、すなわち、情報収集によってすぐに不調和が解消できない場合には、人間はその過大な不調和を生みだした物を避けることで、不調和を回避する行動をとることもあります。つまり特殊的好奇心は、不調和の中でも解消の目算がつくものに対して生まれやすい、ということです。

不調和は、拡散的好奇心によって広く情報を仕入れている過程で生まれてくるとかきやすいものです。そして不調和によって生まれた特殊的好奇心による情報探索で不調和が解消されます。すると、また情報入力レベルが低下し、拡散的好奇心が喚起される。その過程で、また違う不調和が生まれる。そんな風にして、私達は拡散的好奇心優位の状態と特殊的好奇心優位の状態を行き来しながら、様々な情報や経験を絶えず獲得するために行動を続けていると考えられます。

好奇心は内発的動機付け状態につながる

以前の記事で、人間のモチベーションについての心理学理論についてご紹介しました。

「楽しいからやる」「やりたいからやる」というモチベーションである内発的動機付けは、自律的かつ継続的に行動を生み出す原動力になることから、努力を続けていくためには理想的な動機付けの状態です。好奇心は、この内発的動機付け状態を作り出す上で重要な働きをすると考えられます。

好奇心は人間の生来の性質が生み出す、自発的、自律的な情報探索行動のモチベーションです。さらに、不調和の解消や、最適な情報入力レベルを得ること、つまり好奇心が満たされた状態というのは、人間が求める快適な状態であり、報酬として作用します。

好奇心による情報探索が報酬を生み出すと、この認知行動プロセスは強化されることになります。つまり、好奇心→情報探索→報酬→好奇心→情報探索→報酬・・・という自己強化ループが生まれ、「楽しいからやる」「やりたいからやる」という内発的動機付けの状態が作り出されることになります。

好奇心を育てる子供への働きかけとは?

ここまでで、好奇心というものについて基本的なことを見てきました。記事の後編では、子供の好奇心を刺激するという視点から、もう少し好奇心について見ていきたいと思います。