基本は子供の努力を褒めて増やすこと
前回の記事で、努力の才能とはつまるところ「性格特性の良いバランス」であることを説明しました。
であれば、努力の才能を伸ばすためには、努力に相当する行動が増える方向に、性格特性のバランスを調整していけばよいということになります。
しかし、これも前回書いたように、性格特性は数値化できず、学力や運動能力のように細かく状態を把握することができません。そして、性格特性には生まれ持った個人差もあり、努力の才能を育てる上で、働きかけるべき性格特性の要素も人によって違ってきます。
そこで利用していくのが「行動の強化」という概念です。人の行動は、行動の結果をうけて増えたり減ったりします。基本的に、行動の結果良いことがあれば増えますし、悪いことがあれば減ります。
大人でも子供でも、褒められた行動はまたやろうと思います。褒められることが報酬として作用し、行動が強化されるのです。子供にとって、親に褒められることは非常に大きな報酬として働きます。従って、自発的な行動や、困難な課題へのチャレンジ、継続的なトレーニングなど、自律的な努力につながると思われる行動を意識して褒め、強化していきます。
行動の強化と言っていますが、この強化は実際のところ、ブラックボックスである性格特性に働きかけて、結果としての行動を増やす方向にチューンしています。
例えば、困難な課題へのチャレンジという行動の強化は、結果として「自信」や「がまん強さ」などの特性を強める一方で、不安感などの行動を抑制する特性を弱めているものと考えられます。
従って、性格特性の状態がわからずとも、望ましい行動を強化していくことで、努力の才能を伸ばすことができるのです。
努力の才能を伸ばす効果的な褒め方・褒めるポイント
「褒める」というより「認める」イメージで褒める
「褒める」と聞くと、「よくやった!」「すばらしい!」というように少々大げさな言葉遣いをイメージをするかもしれません。しかし下で書いていく通り、努力の才能を伸ばす上では、子供の小さな成長も拾い上げて褒めていくことが効果的です。
変に大げさに褒めると、不自然な感じになって子供に素直に受け取ってもらえない可能性もあり、何よりやっている方も違和感を感じます。ですから、大げさな褒め方よりもむしろ「認める」に近い、軽い感じの褒め方の方が、自然に上手く褒められます。
例えば「うん、できたね」「すごいね」という風に、子供が何かできたことを確認するような褒め方でOKです。
具体的に、間をおかず褒める
子供を褒める時はただ漠然と褒めず、具体的に褒めます。例えば「わあ、すごいね」とただ声をかけるのではなく、「○○は大変なのに、最後まで頑張れたのがすごいね」というように、子供が何を褒められているのか、内容を伝えることを意識しましょう。
具体的に褒めれば褒めるほど、そしてその内容が子供の自負と一致していればしているほど効果が上がり、親子の信頼関係も増していきます。
また、褒める時はなるべくその場で間をおかずに褒めます。子供によっては、得意になって自分の工夫や頑張りを説明してくれることもあるでしょう。そんな時はじっくり話を聞いて、重ねて褒めてあげましょう。
成長を指摘する
どんなに小さなことでも、努力の結果子供の成長が認められた時は、すかさず指摘して褒めましょう。この時、必ず子供の行動と関係づけて褒めます。
「毎日やっていたから、○○ができるようになったね」「上手くやりたくて何度も繰り返したから、できるようになったね」と、具体的に褒めます。
成長を褒める時、その内容はどんなに小さなことでも大丈夫です。「褒めるに値しない」「たいしたことではない」という考え方は、日本人の謙遜の美徳には適うのですが、子供の努力の才能を育てる上では邪魔になります。積極的にいきましょう。
【上級編】望ましくない行動でも、望ましい部分は指摘して褒める
子供のいたずらや思慮に欠ける問題行動には、しばしば努力の才能と強く関係する要素が見出せます。例えばいたずらや衝動的な行動には、「好奇心」「積極性」「自発性」といった、努力を生み出す基礎となる性格特性の発露が認められます。
そのような時、親は往々にして「この能力がまともな方向に向いたなら」と感じるはずです。そこで、そんな時はその問題行動全体を叱るのではなく、叱る部分と、認めて褒められる部分にわけて扱いましょう。
・・・というのが理想です。しかし、これを何かやらかした子供を眼前にリアルタイムで行うのは至難の業です。相当に心の余裕がないとできません。ですから、できなくても気にしないようにしましょう。もしも叱った後で、「あーでもあの部分に関しては褒められるかも・・・」という点が見つかり、後からでも指摘してあげられたなら、上出来だと思います。
【超重要】結果や持ち前のセンスを褒めると努力の才能が潰れる
結果や持ち前のセンスを強調して褒めることは、絶対にやめましょう。結果を褒めると、強化される行動は「結果を得ること」になります。すると子供は褒められるために結果ばかりを求めるようになります。
結果ばかりを求めることは、その過程の努力や成長を軽視する結果を生みます。そして、望む結果を得るためには手段を選ばなかったり、望む結果を得られる確証がなければ行動しない子供になってしまいます。
持ち前のセンスを褒めることは、「自分には努力が必要ない」とか「センスがなければ努力は無意味」という子供の誤解につながります。例えセンスのある子供でも、努力の才能が育たなければ、大きな成長は見込めません。
逆に、センスの良い子が努力の才能を身に着けられれば百人力です。努力の才能を育てるために、筋の良さ感じる子供であっても、その点を強調せずにあくまで努力した部分を褒めていくことが大切です。
以上、努力の才能を育てるための、褒め方のポイントを見ていきました。お気づきかとは思いますが、上手に褒めるためのポイントはたくさんあり、子供の行動に合わせて良いタイミングで上手に褒めるためには、親側にそれなりの心構えが必要です。子育ては子供を褒めるゲームだと思って、褒めの技術を磨いていきましょう。