努力する子の育て方

努力に勝る才能無し!努力の才能を育てる教育法、ボルダリングによる育児ハック実践、我が家の超個性的なギフテッド児の生態など

ボルダリング始めて1年:うちの子の成長、メンタル編

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前回の記事では、1年間のボルダリングで見られたうちの長男ケイの身体的、クライミングテクニック的な成長について書きました。 

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しかし、この1年間のケイのボルダリングの成果というものは、やはりメンタル的な成長の部分にこそあるのではないかと感じています。そこで今回は、ボルダリングに関するケイのメンタル的成長について書いていきたいと思います。

ボルダリングで学んだ気持ちの力

ボルダリングは多分にメンタルスポーツです。壁に取りついたクライマーは常に一人で、他人の助けは基本的に得られません。従って、クライマーの精神状態はパフォーマンスに非常に大きく影響します。自分の精神状態を把握しコントロールすることも、ボルダリングには必要なスキルの一つです。

気持ちの問題一つで、同じ課題がびっくりするくらい簡単に登れるようになったりという体験を通じて、「自分の気持ちがパフォーマンスに大きく影響する」という事実を、ケイはこの1年で学んできました。

自分を信じることの力と恐怖心の克服

失敗が落下に結びつくボルダリングでは、恐怖心の問題は避けて通れません。いくら下にマットがあって、ボルダリングとはそういうものだとわかっていても、4mの高さから足を滑らせて落ちる瞬間はやはりヒヤッとしますし、誰だって落ちるのは怖くて、悔しいのです。

前回の記事にも少し書きましたが、ケイがボルダリングを続けてきた中でぶつかった壁の一つが「恐怖心」でした。壁の高い所が怖いという単純な恐怖心は慣れでかなり緩和することができたのですが、少しずつ課題が難しくなっていくと、それとはまた別の恐怖心が生まれてくることになりました。

それは、「失敗するかもしれない」という恐怖心です。この「失敗するかも」は、誰もが持つ、高所への拭い去れない恐怖も増幅して、次の一歩を踏み出せなくしてしまいます。ケイが5級の課題を登っていた時に、これで非常に苦しみました。

明らかに気持ちの問題で登れなかった課題

その課題は、ゴール前最後の一手がケイにとっての核心(一番の難所)でした。要求されていた動きは、それまで乗っていた非常に安定したホールドから、左足をとても薄くて爪先がやっとかかるくらいのホールドに移し、そこに体重を預けながら体を引きあげてゴールをつかむ、というものでした。

この時一番の肝は、とても不安定で足のかかりが悪い左足に十分に体重を預ける部分です。それができてしまえば後は難しいところはありません。ただ、ケイはこの動きがどうしてもできなくて、わりと長いことハマっていました。どうしても、左足に体重が預けられないのです。

その原因はもちろん、「滑りそうで怖い」から。確かに滑ったら間違いなく落ちるし、それが嫌なのはわかります。でも、ケイの体格では、その課題を登るにはその動きを避けては通れません。

技術的にも身体能力的にも、ケイにとってその左足に体重を預けて次の一手を出す動きは、別に難易度の高いものではありません。もしもそれがスタート直後なら、間違いなくできている動きです。だから、ケイがそれをできないというのは、もう100%メンタル的な問題でした。周りで見ている人もみんな「できるでしょ」と言うのに、ケイはどうしても左足に体重を預けられない。

そんな様子を見兼ねた優しいスタッフさんが、助けの手を差し伸べてくれました。もう後は気持ちの問題、一回できればできるようになるのだから、最初は補助をして登らせてくれると。その左足に乗る所で支えてあげるから、というわけで、ケイの真横でサポートしてくれることになったのです。

それでどうなったかというと、ケイは横のスタッフさんが支えるために伸ばした手が触れる前に、さっと左足に体重を預けて、登ってしまいました。得意満面で「助けてもらって登れた~」と降りてきたケイに「スタッフさん触ってなかったよ」というと、「え、嘘?!」と驚いていました。その後すぐにもう一度登ってみてもらいましたが、もう左足に体重をかけるのを怖がる様子はなく、当たり前のように登ることができました。

自分の力を信じる、できるということを信じることが、いかにパフォーマンスに直結するか。ケイがこの過程で学んだのは、とても大切な、自信の力でした。「ほらね、できると思ってやらないと、できることもできなくなっちゃうんだよ」と言うと、ケイは納得したように、静かにうなずいていました。

まあ、それでケイが完璧なまでの自信を身につけたなんてことはないのですが・・・この体験以降、難しい場面でケイが思いきれずに登れないというシーンは、極端に減りました。自分が力を発揮できるかどうかが、気の持ちようで大きく変わるというわかりやすい体験は、彼に自分を信じることの大切さを教えてくれたと思います。 

 

 

諦めずに困難に取り組む姿勢

もう一つ、この1年間でケイがメンタル面で非常に成長した点は、困難を前に簡単に諦めない姿勢が身についてきたことです。

ケイは元来前向きな性格です。だから新しい挑戦に関しては物怖じせずに取り組めます。しかし、いざやってみて上手くできなかった時頑張りがきくかというと、それはそうでもありませんでした。できなかったら結局は、「もういい、違うことする」となってしまうことも多かったのです。

ボルダリングでも、ちょっとやって登れない課題は「また今度」と言って遠ざかり、結局やろうとしなくなる傾向が最初からあって、気になっていました。ボルダリングジムには課題はいっぱいあるし、週替わりや月替わりの新しい課題というのも作られるので、必ずしも苦手な課題に固執しなくても、新しい課題を登っていられます。

なので、新しい課題に臆せずチャレンジする持ち前の前向きさは非常によくみられる一方で、苦手な課題を克服する努力への前向きさというのは、ケイの場合中々自然と出てくる感じではありませんでした。

私としてはできることなら「苦手なこと、できないことにも前向きに取り組んでいく気持ち」を育てたいと思っていました。その気持ちがないと、結局楽な方にばかり流れていって、努力しないということになってしまうと思ったからです。そして、ボルダリングはその気持ちを養っていく上でも、良いツールになるはずだと考えていました。

しかし悩みどころだったのは、うちの子にとってボルダリングはただの趣味であるという点です。別に競技の世界を目指しているわけでもなく、楽しくて登っているだけなのに「どうしてもっと難しい課題に挑戦しないんだ、楽な方に逃げるな」みたいな厳しい指導をするのは、ちょっと違うという思いがありました。それに、もしボルダリングに行かなくなってしまったら、それはあまりに残念です。(私としては、ボルダリングジムの代わりに公園に行くのが非常に辛いのです)。

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困難に立ち向かうための情熱の力

そこの問題を解決してくれたのは、ケイのボルダリングに対する並々ならぬ情熱でした。ある日のボルダリングジムからの帰り道、ケイがぽろっとこぼしたんですね。「僕はボルダリングがもっと上手くなりたい。ジムの一番難しい課題も登れるようになりたい」と。「じゃあ登れない課題を登れるように練習しないとね」と私が言うと、「うん、僕頑張る!」と。

その意気やよし!ということで、そこから少しずつ、できない課題、苦手な課題に諦めず取り組んでいく姿勢への指導を開始しました。ちょっとやってできないとすぐ別の課題に興味が移る癖を指摘して、「その姿勢だといつまでも上手くならないよ」と、すぐに諦めずに試行錯誤しながら取り組み続けることの大切さを伝えていきました。

中にはずっと登れずに2か月間断続的にトライし続けて、やっと登れたという課題もありました。しかし、そんな風に時間をかけて、色々考えて苦労して登った課題の達成感はひとしおだったようで・・・その成功体験を繰り返す中で、ケイの苦手な課題に取り組む姿勢は徐々に改善され、今では、無謀な難度の課題へのチャレンジを除いて、できない課題をすぐに放り出すということはほとんどなくなりました。

ボルダリングを通じて自然と努力の才能が磨かれているはず

先日、ケイが「つらいことでも、どうすれば楽しめるかを考える、それが大切」と言っているのを耳にして、びっくりするということがありました。誰かに聞いたものなのかも知れませんが、少なくとも私達が家で教えたということはありません。経緯はともかく、7歳にしてその考え方に到達し、言語化できているというのは、中々すごいことだと思います。

その考え方にボルダリングがどれくらい関わったかは知りませんが、少なくともボルダリングが、ケイに対して「楽しいことでも上達の過程には辛さや苦しさがある」ということを教えてくれているのは間違いありません。

ケイはこの1年間で、「その辛さも含めてボルダリングの楽しさ」という部分には気づくことができたのだと思います。だからこそ、課題が難しくなって簡単に登れなくなった今でも、毎週自分からジムに足を運ぶことができるのでしょう。

向上を目指せば、それが何であってもただ楽しいだけではいられません。そこには努力が必要で、そして努力には辛さや苦しみというものは、まずもってついて回るのです。目標が高ければ高いほど、目標と現実とのギャップだって苦しくなります。

そういう事実に、もしかしたらケイはもう気づきつつあるのかもしれないな、と感じます。もしまだはっきり気づいていなくても、そのうち間違いなく気づくことができるでしょう。私がいちいち説教めいたことを言い続けなくても、ジムで課題と向き合う中で、きっとボルダリングが教えてくれます。

また一年、子供のボルダリングを見守る

ボルダリングが完全に習慣化しても、ケイの登ることへの情熱は陰りを見せないようです。きっとまた次の一年も、更なるグレードの更新を目指して毎回ヘロヘロになるまで打ち込むのだと思います。

もう技術的には、素人の私にはまったく歯が立ちませんが、メンタル面、競技や努力に対する物の考え方についても、そのうち私の助言が必要なくなってしまう所に到達するのかもな、という考えも頭をよぎります。PDCAサイクルが十分に回るようになってしまえば、あとは基本的に見ているだけですからね。 

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そうなったら、私は単純に応援するだけの人になるんだなと思うと、少々寂しかったりするのですが・・・それはまぎれもなく子供の成長の証。そして、子供に口出しする数を減らすというのは、きっと私にとって良い子離れの訓練なのです。

また一年、ボルダリングはケイを、身体的、精神的に成長させてくれることでしょう。これからケイがどんな成長を見せてくれるかをまた楽しみにしつつ、彼のボルダリングを見守っていきたいと思います。